帝都への道
「話はまとまったようですね。明日の朝には帝都に出立しますのでそれまでお休み下さい。」
そう言ってルシウスは部屋から出ていった。
リックは手甲と足具を返すと、村を救ってくれた礼だと言って鎖帷子を俺の体に合わせて作って持ってきてくれた。寝ている間に体のサイズは測ったらしい。
リックが鍛冶屋に気合を入れて作れと言ったところ、どうやら気合いを入れすぎたようで、俺がグリフォン討伐の時に貸してもらった手甲や足具レベルの防具が出来上がったようだ。
レインは、戦闘中に俺の気付かない間に折れていた杖の代わりにグリフォンのクチバシで作った杖とグリフォンの羽で作った羽織を貰っていた。
素材類の加工は獣人族の専売特許らしく、あっという間に出来たとレインが後で嬉々として語ってくれた。
翌朝俺たちは帝都に向けて出発した。少数ではあるがゾロゾロと列を作り行進していく。
その中に異質な影が1つ。
「レインさんと一成さんの強さに惚れ込みました!!ご一緒させてください!!」
しっぽを左右に振り、目を輝かせ俺たちに頭を下げてきたソレは警備長リックの娘、ラックである。
俺たちが村を出ようとするタイミングで、待ってましたと言わんばかりに出てきて志願された。ルシウスは、
「帝都に行くまでなら構いません。獣人族の俊敏さと偵察能力は頼りになりますからね。」
と言っているが、恐らくコイツは旅の意味を理解しないままずっと旅に同行する気満々だろう。
あしらおうにもリックには世話になったし、そのリックから
「娘に社会勉強させてやってくれ!!」
なんて豪快に頼まれちゃ断りもできん。
ラックは帝都までの道中落ち着きなく俺とレインの周りをウロウロしながら相変わらず目を輝かせている。でもその様子にレインは
「今まで独りだったので賑やかで楽しいですね。」
と、笑顔で言っていた。
帝都までは意外と距離があり、徒歩で歩き続けて丸1日程度かかるようだ。流石に歩き続けることは出来ないので途中で野宿を挟みつつ2日半かけて帝都に向かう予定だった。
「何か近付いてきますね。」
さっきまでウロウロしていたラックが最初に気配に気付く。その表情には俺たちに向けていた無邪気さは無く、完全に狩人の目になっていた。
「レイン、共有を。」
「分かりました。」
そう言って聴覚を共有するが、森の中のけもの道を進んでいるような状況だ。風で揺れる木々の音と敵の音の判別がつかない。
「皆さん私の後方へ。ラックさん、どの辺ですか?」
「私達の前方少し右50メートル程です。」
成程、これが獣人族の索敵能力か。彼らは耳だけでなく、鼻が利く。
風を読む力も相まって、より正確に敵の位置を図ることができるようだ。
「確認しました。ハイゴブリンですね。」
ルシウスは単純に目が良い。そして動体視力、観察力もずば抜けて高いので、おおよその位置さえ掴めれば敵を捕捉するのはそう難しくないようだ。
「すぐに仕留めます。」
そう言って飛びかかろうとするルシウスを俺は制止する。
「俺がやろう。お前が行くとどう足掻いても目立つ。敵がハイゴブリンということは他に仲間がいるはずだ。」
「……分かりました。お気をつけて。」
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