霊薬
村にたどり着くと同時に俺は意識を失った。前と同じく過度にかけすぎた回復魔法のせいだろう。
目を覚ました時俺はベッドの上で、前と同じようにレインが椅子に座り眠そうにゆらゆら揺れている。そのまま倒れかけた所を俺は咄嗟に腕を伸ばし受け止める。
「一成さん、目を覚ましたんですね!!」
本当に嬉しそうに笑う彼女を見ると俺も思わず笑顔になる。
レインは俺が目を覚ましたことをリック達に報告すると言って部屋を後にした。
「あなた方にいくつか聞きたいことがあります。」
リックとレイン、ルシウスが部屋に入ってきて、開口一番に慌てた様子で話を切り出してくる。
「なんだ?」
「レインさんの回復魔法は一瞬で全開できるというのは本当ですか?」
「すまんな、口を滑らせちまったんだ……」
リックが小声で俺に囁く。
「気にしないでください。隠し通せるものでも無いし、怪我をしている人間がいれば関係なくレインは治すでしょうから。」
「事実なのですね?」
ルシウスの問いに俺は首を縦に振る。
「そして一成さんがあのグリフォンを素手で戦闘不能にさせたというのも事実ですか?」
「ごめんなさい、口を滑らせてしまって……」
レインも小声で俺に囁く。
「気にするな。隠し通せるものでも無いし、他にできた人間も居ないだろうしな。」
別に隠したかった訳では無いがこういう人間には出来ればあまり知られたくなかったことではある。
「おふたりを帝国軍に迎え入れたい。」
「嫌だね。」
「即答!?」
ルシウスが盛大に驚く。
「俺とレインの旅の目的はレインの見えない目を見えるようにする事だ。軍に所属することはその妨げになるとしか思えないからな。」
「成程……」
ルシウスは少し考えた後、思い立ったように提案してきた。
「これは極秘なのですが、私はこれから巫女と共に世界を回る任務をこなさなければなりません。その任務におふたりもご同行するというのはどうでしょう?」
「とうとうそんな時期が来たのか……」
リックが感慨深そうに腕を組み空を見上げる。
一方で俺もレインもなんの事だかさっぱり分からないと頭の上にハテナマークを浮かべている。その様子を見てリックが説明してくれた。
「100年に1度、巫女と呼ばれるとてつもない魔力の器を持つ人間が生まれるんだ。それと同時にこの世界の5箇所から魔力が溢れ出し、その魔力に呼ばれて魔物たちが集まる。」
「そして、巫女を魔力の溢れ出す地、魔源に連れていき、魔力を吸収させて魔源を鎮圧。その後残った魔物たちを掃討するのが今回の任務という訳です。」
つまりはとっても危ない任務って事だな!
俺はレインの目が治る方法が掴めるなら別に文句は無い。
それに先の戦いでルシウスの強さは十分理解しているからこれ以上心強いことは無い。
「レインはどう思う?」
「一成さんが良いのでしたら私は構いません。」
「ルシウス、俺は目的の手段が見つかればお前も巫女も関係なく、レインを優先する人間だ。それでも構わないか?」
「構いませんし、それについて少しですが情報があります。」
「何!?」
願ってもない話だ。全くあてがないから人の多い街に向かおうとしていた所だったが、こんなところで話が進むとは。
俺だけでなくレインも少し嬉しそうな顔をしている。
「霊薬エリクシールというものはご存知ですか?」
「すまんが俺はこの世界には疎くてな。」
「伝説の霊薬、不老不死の秘薬、森羅万象を司る液体とまで呼ばれるとんでもない薬だよ。」
リックが話に割って入る。
「だがそんなもん存在するかどうかすら怪しいもんじゃねぇか。別に否定するつもりじゃねぇが希望を持つのはやめといた方がいいぞ。」
「上等」
俺の世界じゃその希望すらほとんど持てないレベルだったんだ。出来ることがあるならなんでもやってやるさ。
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