第39話 レイの奇妙な冒険(本人曰く奇妙じゃない)



「んー暑いのじゃ」


 はぁ、レーナが抱きついておったのか。どうりで暑い訳じゃ。うー、喉が渇いたのじゃ。確かレーナが作ったお茶がやかんに入ってるはず……お、あったあった。


「ぷは〜美味い」


とはいえすることがないのぉ。トランプも一人じゃできないし、クルハやレーナを起こす訳にもいかん。失礼かもしれんしな。今は……3時か?前クルハに時計の読み方を教えてもらったからあってるはずじゃ。ま、暇だし外へ出ようかの。とはいえ、玄関から出たらバレそうじゃな。ま、窓から出れば問題ないか。


『部分獣化』


 よし、これで大丈夫なのじゃ。服を着てるからかちょいと羽を動かしずらいが、まあ大丈夫か。


「しっかし、誰もいないのぉ。とりあえず海の方に行ってみるか」


 レーナが妾みたいになったのは面白かったな。まるで妾みたいじゃ。お、ついたついた。しっかし誰もいないのぉ。人の一人や二人いたらどうなんじゃ?面白くない。


「おやおや、こんなところで子供が彷徨いていては危ないですよ?」


「危ない、とは?」


 誰じゃ?気配すら感じられんかったが。だけどこの人、なんか見たことある気がするのじゃ。だれっだっけのう。懐かしいような懐かしくないような。


「そうですね……こんなふうに、でしょうか」


「うん?」


 水晶か?いや、違う。魔道具じゃな。中に人がおる。


『ここに閉じ込められてるの!逃げて!あなたまで捕まってしまう!』


 うん?閉じ込められている?どういうことじゃ?


「今、どういうことだ?って思いましたよね。こういうことですよ!』


『クレズレー』


 く、くれずれぇー?何じゃそれ。聞いたこともない魔法じゃな。


「な、何っ!?効かない……だとっ!?ならこれならどうだ!」


『ギガフレイム』


 ギガフレイムは知ってるな。うん。あれじゃよな?火魔法の。うん。


「ま、また効かない?クッ、クソ!一旦退散だ!次はないからな!」


 あれ、何じゃったんだ?ただ、ちょっと気になるのが『助けて!』って言っておった人じゃよな。レーナだったら絶対助けるだろうが……まぁ、妾もレーナの真似をするか。と言っても、レーナが起きる前までには帰らないといけないがな。


「とりあえずあやつが行った方向に向けてと」


『ラインマーカー』


 うむ、あそこじゃな。ではレッツらごー。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ……なんか想像してたのと違うな。もっと薄暗いイメージじゃったんだが。まさかのごくごく普通の一軒家だなんて。とりあえずノックしてみるか。


「はーい……げっっ」


「げっ、とは何じゃ。げっとは」


「いやぁね。その、えっと。ちょっとした出来心っていうか?なんていうか?その、殺さないで!」


「いや、あの水晶に映ってた奴が気になって来ただけじゃが」


「あ、なんだーそんな事ですか。えぇ、勿論いいですよ。解放してあげます。何ならあなたの奴隷にさせてあげます。あ、奴隷の方がいいですよね?そうですよね。分かりました。それではですね、連れてくるので少々お待ちを」


「いや、奴隷はやめて欲しいのじゃが……」


「いえ、奴隷にさせていただきます。はい。その方があなた様もいいでしょうし」


「えっ、いやその」


 なんじゃ、こいつ。自分勝手で気持ち悪いのじゃ。


「はい、では手を出して下さい」


 はぁ、これは後でレーナに怒られそうじゃ。どう言い訳しようかの。


「はい」


「では、帰って下さい。さっさと帰って下さい」


「分かったのじゃ」


 しかし、どうしようかの。この人。


「あのー私はどうすれば……」


「とりあえずついてくるのじゃ」


 頑張れば引っ張って飛べるはず。ちょいとMPを多く消費してしまうが仕方ないかの。


「わああああああ!?と、飛んでる!?」


「もうちょっと静かにできんか?まだレーナが寝てるところに連れてくんじゃ。静かにせんとここから突き放すぞ」


 まぁ、レーナが怒るから突き放すことはできないんじゃがな。


「わ、分かりました……」


 よし、今のうちにレーナに言い訳をする為に考えておくのじゃ。外へ出てたら急に奴隷になった?いやいや、絶対に怪しまれるのじゃ。じゃあ、急に空から降ってきた?これも流石に怪しすぎるのじゃ。はぁ、どう言い訳をしようかのう。もういっそのこと嘘をつかずに本当のことを言ってもいいかもしれん。はぁ。


 そうこう考えてる間に着いてしまったのじゃ。とりあえずクルハに助けを求めようかの。クルハなら助けてくれるはずじゃ。


「ちょいと静かにしておいてくれ」


「クルハ〜ちょっと起きてくれ。緊急なのじゃ」


「どうしました?」


 起きるのはやいな。流石クルハなのじゃ。


「実はの、さっき外へ散歩してたんじゃが、変な人に絡まれてそのままあの子を助けてしまったのじゃ」


「なるほど。でそれをご主人様にどう伝えればいいかって事ですか?」


「そうなのじゃ。お主人の心が読めるのか?」


「いえ、レイならそうするかなって」


 凄いな。妾も見習いたいぞ。


「とりあえず、こうすればいいんじゃないですか?」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「なるほど!そうすればよかったのか!凄いのじゃ!」


「いえいえ、それほどでも」

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