第36話 何っ!?


「あぁー疲れたあああ」


 うるさいうるさい。まだ、スプリングがついてるだけマシだと思うけどな。でも、疲れたのには同感。ジャーパンへ来るまでの船が特に辛すぎた。回復魔法で何とかしてもらってたけど、それでもすぐに酔っちゃう。しっかし、何で雨が降ってるのに出港しちゃうかなぁ。絶対に危ないって分かってたはずなのに。


「で、ここってどこなんだっけ?」


 永塚くんサァ……


「一応フューリンだって。まあ日本で言うところの山口県かな?」


「げっ。山口って。どこだよそこ。絶対にドがつくほどの田舎だろ」


 今山口県民を敵に回しました。ほら、山口にもいいところあるよ。多分。


「椎名もそう思うだろ?」


「あのねぇ、山口県を馬鹿にするのはいいとしても、ここにきた理由。覚えてる?」


 え、椎名さんまで山口県馬鹿にすんの?どんだけ山口県の印象ないん?


「はぁ、やっぱ分かってないじゃない。いい?ここに魔族が出たって言うから私たち勇者が行くことになったのよ?」


「へいへい。分かってるよ。それよりも、早く宿行こうぜ。さっさと部屋で寝たい」


「それは同感かも」


「な、奏もそう言ってることだしよ。さっさと行こうぜ」


「はいはい、分かりました。じゃあ、みんなこのまま宿に行ってそこからは各自個人行動でいいかな?」


「「おっけー」」


 とりあえず宿に入ったら寝よっかな。


「しかしよ、どこに宿があるんだ?」


「どこでもいいってシュバルツさんから」


 出来ればめっちゃふかふかなベッドがあるところがいいな。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「まあここにしましょうか。街の人もここが一番勇者の方に似合ってるって勧められたことだし」


「さっさと行こうぜ」


「はいはい」


 あれ、見覚えのある人がいる。あれは……あ、レナちゃんにクルハちゃんだ。あと、子供が一人?何でだろ。しっかし、レナちゃん意外とこんなところに来たりするんだ。まぁ、この世界では山口県は結構世界でも人気の観光名所らしいから来ててもおかしくは無いのかな?


「おーいレナちゃーん。久しぶり〜」


「あれ、奏さん?お久しぶりですね」


 な、奏から奏さんに変わっちゃってる。これは矯正しとかないと。


「もう、私を呼ぶときは奏でいいって」


「は、はい。奏……」


 はぁ……可愛い。なんか前会った時より可愛くなってない?羨ましいんだけど。いっそのことレナちゃんと一緒の部屋行こうかな。交渉してみよ。


「レナちゃん。ここの宿代出すから一緒の部屋になっていいかな?もちろんそれだけじゃ足りないなら追加でお金も出すし」


「え、まぁレイちゃんもクルハも良いって言うなら。じゃあ、大丈夫ですよ。お願いします」


 よっしゃ。これでレナちゃんやクルハちゃんの話がいっぱい聞ける。やったあ。


「奏?そこで何を話してるのかな?」


「ぴゃあ!?」


 椎名ちゃんじゃん。


「まさか、久しぶりに会ったレナさん達と一緒の部屋になろうとは考えて無いよね?」


「ま、まさかぁ。ハハハ」


「そっかぁ、ならいいけどねぇ。でも私には、レナさん達と一緒の部屋になる代わりに宿代を全て自腹で払うみたいなことが聞こえてきたんだけどなあ?」


 こ、怖い。なんか顔は笑ってるのに心は笑ってないよぉ。こんな時は……レナちゃん達の方向を見る。うるうる。うるうる。キラキラー。


「ま、まぁ、私は大丈夫ですから。ちょっと落ち着いて」


「いいえ、今回は許しません。いっつもあなたと一緒に女の子が泊まるとお肌がツヤツヤになって帰ってくるんですから」


 うっ。それを言われると、男子からの視線が……しかも、もうざわついてるじゃん。あ、終わった。人生詰みました。対あり。しかもレナちゃん達まで引いてる。うわーん。


「もしかして今回もそんなことをしようとしてたわけじゃ無いですよね?」


「スゥゥゥー。いや?別に?」


「はぁ。これだから。奏は。とりあえず、あなたのお金でレナさん達の宿代(レナさんがここから出るまで)を出してね」


「ええー」


「ええーじゃない。寧ろこっちがええーだわ。あなたも永塚君みたいになりたいの?」


 う、それは嫌だ。ダンジョンで一人で粘液ガエルを倒すのは流石に無理。あれ臭いし汚いしで嫌だからさ。


「すいませんでした」


「それでよし」


 はぁ、散々だぁ。レナちゃんとはできないし、秘密はバラされるし。運無いなぁー私。まぁ、レナちゃんが1週間でここを出るから私のお財布事情は何とかなったからいいけどさ。


「じゃあ、これでお別れですね。さようなら」


 なんか私フラれたみたいな感情になってるよ。今。実際には嫌われたんだけど。うぅ。


「おいおい、あの、レナってやつ結構可愛くなかったか?」


 それはそう。


「いやいや、あのクルハってやつも良かったぞ。あの胸。やっぱデカさだろ」


「いや、俺はあの美幼女が……」


「松浪。それは犯罪だぞ」


「ああ。その道だけはしっかりと否定しておく」


「どうしてだよぉぉ」


 まあ、私もちょっとロリコンは理解できないかなぁ。私からしても。やっぱ、レナちゃんみたいな気が弱い子が一番。なんせ、強引にしちゃえば了承貰えちゃうしね。


 さてと、私の部屋は……42号室か。うん?42号室?レナちゃん達は41号室だったはず。こ、これは!まだ神は私を見放してなんかいなかった。ありがとう神様。


「ふふふ、こんな日のために練習しておいた聞き耳スキル。とくとご覧あれ」


 ……あれ?何も音がしない。もしかしてちゃんと魔法かけられて音が漏れないようになってる?最悪じゃん。やっぱ、神は私を見放したんだ。悲しい。


 とりあえず、前回会ったところで拝借したレナちゃんの髪の毛の匂いを吸ってと。ああーレナちゃん成分が補給される。これで落ち着いて寝れる。そして勿論寝る時はレナちゃんと一緒にする妄想をして寝る。これが私の一番のお気に入りの時間。


〜とある部屋にて〜


「おい、やっぱ、レナちゃんだろ。あの少しの膨らみとロングの髪がいいんだよ」


「いやいや、クルハちゃんだろ。πがでかいんだからよ。ほら、πは世界を救うってあるじゃん?」


「なるほど」


「いや、やっぱあの美幼女だろ。何よりクルハちゃんに似てるのもいい。親子ってのもまた妄想が唆る」


「話変わるけどさ、奏ってやつ結構やばくね?」


「な。百合はいいとしてもそんながっつり行くとはなぁ。俺としてはゆっくりとした展開が好きなんだよなぁ」


「分かる〜」

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