第34話 フューレンの街


「クルハ、嫌な予感って詳しく伝えれる?」


「そうですね……なにか、良くない魔物のような気配です。ですが、それだけしか分かりません。一応、レイにも聞いてみましたが、特に何も感じないそうです」


「なるほど」


 多分、金ノ風の方が見たオルトロスっぽい感じはするかな。確かオルトロスはギリシア神話の化け物みたいな扱いだったはず。あれ?番犬だっけ?ま、いっか。兎に角、嫌な予感の正体がオルトロスっぽいってことは要注意かな。どうか、オルトロスと出会いませんように。


「とりあえず、慎重に、でもできるだけ早くこの森から出よっか。クルハも、嫌な予感がするって言ってたし」


「そうですね。では、今から出発でいいですか?」


「はい。持ち物はまとめましたし」


「分かりました。では、近場の街、『フューリン』へ行きましょう。では、ついてきて下さい」


 やっぱ、メリスさんはパーティーリーダーなだけあって、だいぶ頼もしいね。朝ごはんを食べてる時に話したんだけど、森に行くまでの順番?はこんな感じ。

 まず最初にパーティーリーダーのメリスさん。次にリョウさん。そして、私&クルハ+レイちゃん。その次にルカさんが来て、殿をメギストスさんが務めるらしい。まあ、Aランクパーティーというのもあって、すぐに順番は決まったけどね。


「シッ。静かに。ここの辺りは私たちがオルトロスに遭遇したところよ」


 ここがオルトロスに遭遇したところなんだ。あ、あっちも方結構抉れてる。予想はしてたけど、やっぱめっちゃ強い感じの魔物だったんだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 あれから3時間くらい経ったのかな?ようやく道に出たっぽい。あとは歩くだけだってさ。しかも、オルトロスはあの森からは出れないらしい。ほっ。オルトロスと出会わなくて良かった〜。


「クルハ?今も『嫌な予感』はあるの?」


「そうですね。もう、全くと言っていいほどないです。果たしてあれは何だったんでしょうか」


 まあ、嫌な予感が無いに越したことはないから、その点では良かったかな。ちょっと嫌な予感の内容が気になるけど。


「あ、見えてきましたね。あれがフューリンの街です。では、私たちはこれで」


「どこか行くんですか?」


「はい、実は私たち逆の方向にも少し用事があって」


 Aランク冒険者ともなるとこんなにも仕事が忙しくなるんだ。高ランク冒険者は大変だね。


「分かりました。ご親切にありがとうございました」


「はい。また縁があったら会いましょう」


 メリスさん達、いい人だったなぁ。では、いざフューレンの街へ。


 見た感じだとあんまり門には人はいないのかな?


「何か身分を証明できるものは?」


 ランクカードでいいよね。


「うむ、問題はない。そちらの嬢ちゃんは?」


 あ、レイちゃんのランクカード作ってない。どうしよ。無いって答えればいっか。


「無いですね」


「なら、銀貨一枚で滞在許可証を作ろう」


「……うむ、確認した。こちらが滞在許可証だ。期限は特に無いが無くさないようにてくれ」


「分かりました」


 よし。これで何とか入れた。ここが街の一番高いところっぽくて、前に見える港に近づくにつれて標高が低くなっていってる。街の構図的には、半球を半分に割って感じ?私の語彙力じゃ、ちょっと説明しづらいんだよね。

 ただ、めっちゃ綺麗。京都みたいに網目状に道ができてて、綺麗というか美しいまである。写真撮りたい。


「とりあえず、宿とかギルド探そっか」


「分かりました」


「分かったのじゃ。しかしの、あそこからいい匂いがするのじゃ。そこだけ先行かないか?」


 確かにいい匂いする。これ何の匂いだろ?


「とりあえず行ってみよっか」


 お、あったあった。『喫茶趙雲』え?これ日本語で書いてあるじゃん。私が異世界語を見ると頭の中で何となく分かるのに対してこれは、視覚から日本語って分かる。


「むぅ、これは何が書いてあるのか全くわからんぞ」


「私もよく分かりません」


〜一方その頃〜


「おい、あの白髪女で間違い無かったよな?」


「あぁ、間違い無いと思う。小さいガキは知らんが、大人の方は確定でいいと思う」


「じゃあ、さっさと帰って報告するぞ。今にでも怒ってそうだしな」


「そうね、あの方はすぐ怒るもの。ウザイったらありゃしない」


「じゃあ『天使の翼』を起動するぞ」


「分かった」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「魔王様。望みの人物を見つけて参りました」


「うむ、よくやった。やはり『天使の予言』は的中していたか」


「はい、これで魔王様の願いがようやく果たされる時かと」


「ああ、200年も待った甲斐があったという物だ。そうだ、其奴の名前はなんだ?」


「クルハと存じておりました」


「クルハか。ふむ……まぁ、よい。兎に角クルハをここへ持ってこい。お前らしかニンゲンに化けることは出来ないのだからな」


「はっ。ではこれで」


「しかし、幕風の奴らも変わったもんじゃ。ここへ来た当初は跪きもせず、立って話していたからな。まぁ、今では忠実な僕として働いてはいるが……儂の予想だと、そろそろ裏切られる気がするな。そろそろ、身代わりを作る準備をしようか」

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