第26話 安全地帯

「ご主人様。あの部屋の中にある魔法陣はもしかしたら安全地帯セーフティーエリアかもしれません」


「そうなの?」


 やったあ。これでやっと歩くことから解放される。流石にちょっと休憩ね。幸いフェンリルや、他の魔物は出なかったからよかったけどさ。


「はい。あの特徴的な緑色の魔法陣ですし、間違いないと思います」


「じゃ、そこまで行こっか」


「そうですね」


「でもさ、ここってどこのダンジョンなんだろうね。正直なところフェンリルなんて普通でないと思うんだけど」


 ロスタムダンジョンだったりしてね。って、それは流石にないか。


「そうですね……フェンリルが出現するあたり、エンク、ノマル、ハードル、フィニティダンジョンの可能性は低いですね。未発見エリアの可能性もありますが、その可能性は低いでしょう。未発見エリアの場合、なぜフェンリルがここのエリアから出なかったことが気になりますし」


 あれ?これってもしかして。


「もしかしたらロスタムダンジョンかもしれませんね」


 フラグ回収するの早っ。


「でも、ロスタムダンジョンって安全地帯はないんじゃ?」


「はい。ですので、あの魔法陣が安全地帯によるものなのかが気になります」


 確かに。もしかしたら別の魔法陣かもしれないだろうしね。


「じゃ行ってみよっか」


「そうですね」


「ていうかさ、なんでこんなとこに転移しちゃったんだろうね。よくよく考えてみればおかしくない?」


「確かにそうですね。ご主人様。何か心当たりありますか?」


 全くないね。うん。微塵も無いと言ったら、嘘になるけど。例えば私が転生者だったりとか。でもそれだとクルハが転移してきたことに説明がつかない。よってこの説はないかな。次に私がハイヒューマンであること。でも、これもさっきと同様にクルハは猫人族だからこれも説明がつかない。って、今思い出した。クルハのケモ耳、モフってない。これはいけない。あとでお願いしよ。


「つきましたね」


 クルハ。なんでそんな意味の分からない魔法陣を見て判断できるの?これも冒険者の実力?


「そうですね。ここは安全地帯で間違いないと思います」


 ほっ。これでよくわかんない部屋だったら発狂……とまではいかないけど、叫んでたとは思う。とりあえず、テントを張って行こうか。あれ?これペグ入らないからもう一つ作るしかないかな。あーなんでペグのやつ作っちゃたんだろ。自立型のテントにすればよかった。

 とりあえず、ドーム型のテントでいっか。使ったことないけど、ノリで行けるでしょ。多分。


「ふぅ。なんとか設営できてよかったよ」


 じゃ、テントの中に布団とランタンを出してと。そしてアウトドアテーブルと椅子を出したら完成。ノリでテント設営できてよかった。実は一回ミスってるなんて言えない。あ、クルハに耳モフらせてもらお。


「クルハ。耳、モフらせて」


 あれ?クルハが頬を赤らめてる。


「ご主人様?その意味分かってて言ってますか?」


 あれ?もしかして、モフらせてもらうことってなんか意味があるのかな。


「耳を触らせてモフらせては『恋人になって』という意味ですよ?」


「クルハなら別にいいけど?」


 クルハなら別に全然いいけどね。可愛いし。恋人になればモフモフし放題だし。


「いや、あの、女の子同士で恋人になるのはヘンな気がするのですが。別にご主人様と付き合うのはかなり嬉しいのですが」


「クルハ、多様性」


「そうなんですか?一応法律上、同性でも付き合えますし、結婚もできますけど」


 意外とこの世界にも同性婚に寛容なんだね。よかった。


「じゃあいいじゃん」


「そ、そうですね。じゃ、じゃあ、どうぞ」


 ふわぁ。ピクピクしてる。クルハ恥ずかしいのかな?可愛いぃぃ。

 モフモフ。


「ピクッ」


 モフモフしたら動いた。もう一回やっちゃお。

 モフモフ。


「ピクピクッ」


 可愛い。これは癖になっても仕方ないよね。そして、気になるのがしっぽ。すごい揺れてる。尻尾も触っちゃえ。モフモフ。


「ひやあっ!?」


「ご主人様ぁ。そこは、らめですぅ」


 楽しい。そして尊い。あんなにも真面目そうなクルハがこんな声を出すとは。これはまさに、ギャップ萌えってやつ?


「そうそう、恋人になったんだし、どうせなら、クルハもタメ口で呼んでよ。そっちの方が親しみやすいしさ」


「いえ、私は奴隷ですし」


 あー確かにそうだった気がする。


「関係ないって。どうせわかんないって」

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