第14話 勇者と共に

 ふぅ、やっと一息つけるよ。よくわかんない勇者だったよ。しかし、あの女の子も可哀想だよね。あの椎名って子にはちょっと優しくしてあげよう。テントの中で今後必要な物でも作っときますか。





 そろそろ、約束の時間かな?クルハにもさっき起こったことを話しておいたよ。さて、勇者の馬車に向かいますか。




「時間になりましたけど、これってもう乗っちゃって良いんですか?」


「あ、この子が椎名の言ってた子ね〜可愛い〜ささ、乗って乗って」


 う、私が苦手な陽キャじゃん。はぁ、陽キャは苦手なんだよなぁ。


「わ、分かりました」


「しっかし、キミ可愛いね。名前は何て言うの?ちなみに私は久城奏。よろしくね」


「レナです。よろしくお願いします」


「レナちゃんね。そっちの白髪の子は?」


「クルハです」


「おっけーレナちゃんとクルハちゃんね。了解」


 会話が辛い。陰キャの私には眩しすぎる。クルハの胸に抱きつこう。ふぅ、安心安心。


「別にそんなに恥ずかしがらなくても良いのに。あ、霙ちゃん。彰人にもう出発できるって伝えといて」


「分かった」


「お前らー準備できたか?」


「こっちは大丈夫〜レナちゃんとクルハちゃんも大丈夫?」


「「大丈夫ですよ」」


「じゃあ、しゅっぱーつ!」



 あぁ、やっと出発したぁ。今はクルハに凭れ掛かってるけど、いつまでもこの体勢じゃ恥ずかしい。でも、目を合わせるともっと恥ずかしい。まぁ、席の端っこだったから良かったけどね。




 お尻痛い。やっぱ、道路がアスファルトやコンクリートではないだけあって、すごく揺れる。そして椅子が硬いからお尻が痛くなる。あ、そういえば座布団を、クルハ用と私用に作ってた筈なんだけど…あ、あったあった。


「クルハ〜これ下に敷いときな。結構揺れがマシになると思うよ」


「ありがとうございます」



 ふぅ、座布団を敷いたらだいぶ揺れがマシになったよ。本当に座布団作っといて良かった。




「そういえば、レナちゃんと、クルハちゃんってどこから来た?」


「レミストアの街からですね」


「あー冒険者の街ね」


「奏さんはどこから来たんですか?」


「ハルト公国だね。元々ハルト公国で召喚されたんだけど、色々あって、冒険者の街の方まで行ってた」


 色々あってかぁ。まず、ハルト公国で召喚かぁ。あれ?ハルト公国って、勇者が作った国であって勇者を召喚した国では無いような…まあ色々とあるのかなぁ。






ふわぁ眠い。気づいたら寝てたのか。あれ、馬車にはクルハしかいない。


「どうしてみんないないの?」


「外で夜ご飯を食べてますよ。私はご主人様が起きるまで待ってました」


「そっか。ありがと」



 外に出ると焚き火に集まってご飯を食べてた。どうやらご飯といっても、動物を狩って串に刺して焼いた物だったけれど。うーん、どうしようかな。まぁ、タレをつけるくらいなら大丈夫でしょ。ちなみにタレは黄金のやつ。これを上からかけて頂きます。うん、美味しい。


「うわぁそれ何?すっごく良い匂いがするんだけど〜」


ですよね。そうなりますよね。知ってました。


「これは、私の故郷に伝わるタレですね。これをお肉につけて食べるとすっごく美味しいんですよ。使ってみます?」


「うわぁ、ありがとうございます!」


 さて、夜ご飯も食べ終わったことだけど、この後はどうするんだろ?


「あ、レナさんとクルハさんですね。この後、ここでテントを張るんですが、テントって持ってますか?」


「ありますよ」


「分かりました。なら良かったです。あの、失礼ながらレナさんのテントにお邪魔してもよろしいですか?あの不埒者が入ってくるかもしれませんし」


 まぁ、別に良いけど、布団を作っとかないとね。


「いいですよ」


「ふぅ、なら良かったです」


 じゃあ、テント張っておきますか。クルハに手伝ってもらうけどね。テントを張り終わったら、中に布団を敷いてと。次に椎名さんの布団も作って敷く。次にキャンプ用のランタンを出してと。これで完成。我ながら豪華だなぁ。う、体を拭きたい。やっぱ汚いと気になるし。でも、我慢かなぁ。とりあえず、パジャマワンピに着替えますか。


「お邪魔しまーすって、もしかして着替えてました?」


 奏さんがきた。せめて呼びかけるくらいはしようよ。


「なんかごめんね。そんなことより、その服ってなに?私が召喚される前にあった服にすごく似てるんだけどぉ」


「あぁ、これはえっとその…」


 やばい。良い感じの言い訳を考えてなかった。


「故郷の物ですね」


 まぁ、あながち間違ってないはず。


「へぇーそうなんだ」


なんかお馬鹿さんで助かったかも。直感が鋭い人じゃなくて良かった。


「とにかく、私が椎名の代わりに寝ることになったから。と言うのも、私がお願いして変わってもらったんだけどね」


 えぇ、椎名ちゃんが良かったな。






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