第42話
その後、僕は更に受験勉強に打ち込んだ。
テストでも、毎回十位以内には入った。ただ一位だけはどうしても取れなかった。
「あのさぁ、勉強に打ち込むのはとても良いことなんだけどね、たまには息抜きも必要だと思うんだよねぇ」
勉強のため、毎日家に篭もっている僕に父が言う。
「いいよ、別に。僕、勉強嫌いじゃないから」
特に歴史は面白い。数学だって、難しい問題が解けた時は嬉しい。
「うっわ、何その優等生発言。今時の受験生って、皆そんななの? 僕、全然勉強した記憶ないのに」
「皆がどうかなんて知らないよ。でも、僕は僕だから」
自分の信じたことをするだけだ。
「何か、宇宙カッコイイー。……あっ、そうだ。これ差し入れ。ココアだよ。頑張れ、受験生!」
父が大仏のイラストの描かれたマグカップを僕に渡した。白鳥さんが誕生日にくれたものだ。
「……そーいえばさぁ、最近白鳥ちゃん達来ないねぇ。鷲羽君は『たまには帰って来る』って宇宙言ってたじゃん。どうしてるのかなぁ?」
先輩は行方が分からないし、白鳥さんともあれから全然話していない。父には先輩は青森に引っ越したと言った。本当のことなんて、話せる訳がない。
「先輩は青森にいるんだよ。そんなにすぐ帰って来れる訳ないでしょ、高校生だからバイトとかして忙しいかもしれないし。それに、白鳥さんだって受験生だよ。勉強で忙しいに決まってるよ」
実際、どうだか分からない。白鳥さんは勉強しなくても頭は良いし、桜木なら僕みたいに必死に勉強しなくても受かってしまうかもしれない。
「そうかぁ。……もしかしたら、鷲羽君、彼女が出来たのかもね~」
先輩に彼女なんて有り得ないと思ったけれど。
そういう人が近くにいてくれたら良いと思う。
先輩が幸せに暮らしていたら良いと思う。
そんな風にして、日々は過ぎて行った。
卒業式の前日までは……。
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