第43話

「宇宙~、明日が卒業式だって時にまで勉強することないんじゃない? いくら受験生だからってさぁ」

「やっとかないと不安になるんだよ。……でもまあ、今日はこのくらいで終わるけどね」

 僕は問題集を閉じて、一息吐いた。

「でもさぁ、卒業式終わって即受験なんて大変だよねぇ。受験終わってから、卒業式やればいいのにねぇ」

 全くその通りである。卒業してもまだ気は抜けない。

 午後十時過ぎ。もう寝ようと部屋に向かった時だった。

「ピーンポーン」と玄関のチャイムが鳴った。

「こんな時間に誰だろ……」

 何となく直感で誰が来たのか分かった。

 僕達の活動は、この時間帯に行われることが多かったから……。


「今日だけ限定、心霊研究会復活よ、橘君」


 数十分後。

 僕と白鳥さんはセバスチャンさんの車に乗って、学校へと向かっていた。

「で、何をするの?」

 詳しいことは何も聞かされずに連れ出されたのだ。

 父は「青春だねぇ」とか言って、止めもしなかった。

 制服で来いということ、行き先が学校だということから、学校に泊り込むつもりだと予想出来た。恒例の徹夜だ。

 受験が近いが、問題はない。大丈夫だという気がする。

「前に、先輩がグラウンドに自作のミステリーサークルを描いたことがあるじゃない? あれに似たことよ」

「ああ、あれか……」

 覚えている。夜中に学校に忍び込んで、石灰で線を引いたのだ。体育の時にラインを引く機械を使って。

あの時も先生に怒られたが、あれはそんなに迷惑行為じゃないと思う。使った石灰だって、白鳥さんが新しいものを買ってくれたし。それに上から見ると、けっこう綺麗に描けていて、クラスメイトから賞賛の声を貰った。

「今回することは、黒魔術と超能力の融合よ。魔方陣の中でテレパシーを送るのよ、先輩に向けてね。言いたいことが山ほどあるのよ」

 きっと白鳥さんだって、分かっているんだ。こんな馬鹿げたことをしても、先輩が戻って来る訳がない。

 でも、このまま何もしないで卒業するのは嫌だったんだ。何かのケジメをつけたいんだ。

 だったら、僕も最後まで付き合おう。


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