第41話

児島さんが帰った後も、僕と白鳥さんはしばらく先輩の家にいた。

 白鳥さんは膝を抱え込んだまま、座り込んでいる。

 もう泣いてはいないけど、まだ気持ちの整理はついていないはずだ。

 白鳥さんに何て声を掛ければいいのか分からない。気の利いた励ましの言葉なんて、思い付かない。

 僕に出来ることは、ただ黙って傍にいることだけだ。

 僕では力不足なのだ。

 先輩の様に、辛い時にへらへら笑って、楽観的に過ごすなんて出来ない。

 僕も白鳥さんも、先輩達の様に大人にはなれない。

 現実なんて受け入れたくない。

 あの時ああしていれば……。

 そんな後悔ばかりが募るけど、もうどうしようもないのだ。先輩はもう何処かへ行ってしまった。

 僕は自分の不甲斐無さを呪いながら、ただ時が過ぎるのを待った。


 カーテンの隙間から西日が差して、時間の経過を知った。いつの間にか、夕方になっていたのだ。

 さすがに、ずっとこのままというのもいけないと思ったので、白鳥さんの方をちらと見る。

 すると、少し顔を上げた白鳥さんと目が合った。

 その瞬間、彼女は何かを決意したかのように立ち上がって、宣言した。

「今日を持って、心霊研究会は解散するわ」

「え……」

 一瞬、何を言っているのか分からなかった。

 白鳥さんは構わずに続けた。

「もう、先輩の事は忘れましょう。……それに私達は受験生でしょう。心霊研究なんて馬鹿な事やってないで、お互い勉強に専念しましょう。……私達に出来るのは、現実を受け入れて、前に進むことだけなのだから」

 白鳥さんだって、本当は悲しいはずなんだ。

 でも、これが彼女に出来る、精一杯の強がりだった。

「……うん」

 僕だって、ただ頷くことしか出来ない。

 ああ、なんて弱虫なんだろう。



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