第19話
◇
夏休みになった。
夏は嫌いだ。太陽の光が眩し過ぎるから。
中学生になって、夏休みにプールに行かなくてもよくなった。大変喜ばしいことである。
何故、暑い夏にわざわざ日差しの下で水浴びをするのか疑問である。海に行くなんて有り得ないと思う。
だから私は、クーラーの効いた自宅に籠もっている。
「美和子様、鷲羽様と橘様がお見えになりました」
執事のセバスチャンが来客を告げる。
「通しなさい」
夏休みになって、心霊研究会の活動拠点は私の家に移った。学校よりも快適だからだ。
二日に一度くらいのペースで集まっている。彼らも暇なのだろう。
「お邪魔します。……わあ、涼しい~」
「内と外では天国と地獄だな。……それにしても、些か空調が効き過ぎではないか?」
先輩が汗を拭きながら尋ねる。
「そうかしら。私には丁度いいわ」
私の家は全部屋冷暖房完備の素晴らしい設計であり、現在の設定温度は二十四度だ。
「心頭を滅却すれば火もまた涼しという諺がある。君は便利過ぎる暮らしを見直してみたらどうかね。児島君が言っていたが、現代は地球温暖化が深刻な問題になっているのだぞ。北極の氷の溶ける速さが異常で、白熊の危機だそうだ」
「そんなことくらい、知っているわよ。でも、このクーラーの恩恵を受けているのは、あなたも同じでしょう」
先輩の家にはクーラーが無いらしい。電気代がかさむので取り付けるのをやめたと言っていた。扇風機だけで夏を越すなんて、私には考えられないけれど。
「うむ、そうだな。私が文句を言える立場ではないな」
先輩は自分の否はすぐに認めるのであった。
「皆様、今日はシャーベットをご用意致しました。休憩時間にお召し上がり下さい」
「後で頂こう。いつもすまんな、セバスチャン殿」
「ありがとうございます」
「いえ、お気になさらず」
きっと彼らも楽しみにしているのだろう。セバスチャンの持って来るおやつは、いつも絶品だから。
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