第9話

 作業は簡単で、すぐに終わった。

「心霊研究会?」

 ポスターにはシンプルに黒ペン一色で、こう書かれていた。しかも手書きで、中々の達筆だ。

『心霊研究会 部員募集中  入部希望者は、二年五組 鷲羽真琴まで』

「どうだね、もし興味があったら是非入ってくれんか。何しろ部員が足りなくて、未だ同好会としても認められていないのだ」

 興味がある所ではない。私の専門分野だ。

「一九二五年、イギリスの探検家ミッチェル・ヘッジスがマヤの古代都市遺跡で発見したものは何?」

「クリスタル・スカルだろう。何、これくらい常識だよ」

 間髪入れずに答えを返してきた。それなりに知識はあるらしい。

 その後、彼を試すつもりで幾つか質問をしたが、どの問いにも正確に答えた。

 少し、驚いた。中学生にしては上出来だ。

「いいわ、あなたの同好会に入ってあげるわ。何しろこの私は黒魔導師よ。この道のプロフェッショナルよ」

「ほう……」

 一瞬驚いたようだが、すぐに満面の笑みで言った。

「そうか。ならば私は超能力者だ」

 ならば?

「そういえば、まだ君の名前を聞いてはいなかったな。先輩後輩という仲になるのだ、名前を知らねばな」

「白鳥美和子よ」

「そうか。これから宜しく頼むぞ、白鳥後輩」

「し、白鳥後輩?」

 先輩には先輩と付けるが、後輩に後輩と付けるだろうか……。

「後輩を後輩と呼んで、何が悪い」

「う……」

 確かに、そう言われるとそうだけれど。

「しかしな、まだ一つ問題がある。我が校には部員が最低三人はいないと同好会とは認めない、という鉄の掟があるのだ。あと一人を何としてでも見つけたい。私の方でも当たってみるが、君も探してみてくれぬか?」 

 部員候補の心当たりは大有りだった。

「ええ、分かったわ」

 

 こうして私は心霊研究会に入部し、鷲羽真琴は私の先輩となったのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る