第7話

あの頃の私の心は、真っ暗な闇に囚われていた。

 今まで出来ていたことが出来なくなった。分かっていたことも分からなくなった。

 心の中に鍵のかかった部屋があるみたいに、閉ざされていたものがあった。

 それを開いてくれたのが、彼らであった。

 その後、中学卒業時に起こった出来事により、私は再び心に鍵をかけてしまったのだが……。

 しかし幸いなことに、それもぶち壊してくれる者が現れた。

 その彼は今……。

「白鳥、紅茶淹れてやったぞ。ったく、休みだからって午後のティータイム満喫だな」

 私の下僕として働いてくれている。

 多少間の抜けた、平凡でこれといった特徴もない彼であるが、私の愛すべき下僕である。勿論「愛す」というのは、言葉の綾であるけれど。

「あら、休みではないわよ。今日はフィールドワークをすると言ったでしょう。秋の夜長に心霊現象、よ。さっさと準備してきなさい」

「へーへー、分かってるって。心霊スポットに行くんだろ。ったく、何で休みの日にこんなことを……」

 下僕が何やらブツブツ呟いているが、気にはしない。

 まあ、実際、今回私が語る話に彼は登場しないのだから、いつも以上に扱いがぞんざいになっても仕方はない。

 そう、今回の語り部はこの私なのだから。


 では、午後のティータイムと洒落込んで思い出話でもしましょうか。

 この晴れやかな秋空の下で……。

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