【ノルン - 8】少女は対消滅させる

※2 少女は夜逃げする から続くノルンの昔話です。【ノルン - 13】まであります。


「うわ〜!また出たっす!どんどん強そうになって行くっす!なんか倒す度にデカくなってるっす!」


 突如現れたキマイラにセレスティーナが狼狽えた――


 セレスティーナ達は隣国の女神教皇国の国境付近のの吹き溜まりを調査していた。瘴気とは生物にとって限りない毒性を持つものである。

 女神教皇国では少なくとも瘴気と呼んでいた。


 その浄化の為に聖女セレスティーナは仲間を引き連れ旅をしていた。その途中見つけた瘴気を浄化していると、このキマイラが突然現れた。

 これが惑星ノエルで観測された初の瘴気の特異点、所謂、魔モノモンスターポップである。


「各自、両翼の陣!構えろ!聖女様を守れ!」

「リガルドさん達頼むっす〜!」


 女神ノエルも惑星を観測し、瘴気が増えたことを懸念した。そこで魔素抵抗値の低く膨大な魔力を扱えるセレスティーナにその役割を与えたのだ。どうせノルンはやってくれないだろう。女神はそう考えていた。


 魔モノモンスターポップも想定外だ。誰が一体、何の為にこんなことをしたのか?はたまた、自然の摂理なのか?


 ノルンは瘴気をみた時にとてつもない幻痛に襲われていた。前世で自分の死因にもなった、をした時もこれに似た瘴気を浴びた気がしたからだ。でもこんなにも禍々しい物でもない気もした。


「く、くるっす〜!」


 キマイラが開幕からブレスを口から吐く。

 炎のような紫色のブレスがリガルド達を襲う。

 盾職リガルドが先頭で盾を地面に突き刺し結界を展開する。


 ――我は地に根付く巨人なりガーディアンオブジアース


 光はパーティー全体を覆い大きな盾となる。


「ぬ、ぐお〜!!!」

 リガルドが吠える!


 その隙にブレス範囲から離れた前衛がキマイラの横っぱらに両翼から斬りかかる!

 右翼は成功、左翼は尻尾の蛇に阻まれた。

 それを想定した連携を繰り出し更に後ろに回った剣士が尻尾を根から斬り落とす。


 キマイラはその痛みに暴れだし剣士達に左脚で爪を振るが右側から腕を斬りつけられる。それに反応し前衛は離脱する。

 と、同時にセレスティーナが魔法を放つ。


 ――英雄級光魔法「千の槍は雨となるサウザンドレイン


 無数の光の槍がキマイラを襲い串刺しにしていく。やがて光の槍は雲散し消えていく。


 キマイラはピクリとも動かなくなる。


「はあ、今回もなんとか勝てたっすね。でもどんどん強くなってくっす。もう嫌っす!」

 

 この戦闘の光景をノルンは後ろで眺めていた。


(なんか、凄いかっこいい!!)


 幾度も同じ敵との連携で慣れているのだろう、凄まじい連携プレーにノルンは感動していた。セレスティーナの魔法もなんかかっこいい、でも少し嫉妬心も生まれていた。


「セレスティーナ、お疲れ様、あれは何度も現れるの?」

「そうっす、その内にあれは黒い霧になってまた現れるっす」


 セレスティーナの話だと倒すと消える、それでまた現れる。それを繰り返しこっちのまで逃げてきたそうだ。


「非常事態というのであれば、仕方がありませんね。でもこっちの国にあれを連れてきたのはいけません」


 オリヴィアがしぶしぶと伝える。


「面目ね〜っす」


 しゅんとするセレスティーナ。


「倒すと消える、また現れる、そして強くなる」


 そうぶつぶつと呟きながらノルンは倒れたキマイラを見ていた。見ているとゆっくりと霧の様に煙の様にさらさらと塵の様に消えていってる様だ。この霧の様なものが瘴気と呼ばれているものだろう。


――これ浄化?しないからまた現れるんじゃなくて?

 ノルンはそんな仮説を立てた。


 仮説を掘り下げる為に整理しよう

 魔素フラッピングエーテルがあるこの世界では相対性理論が適応されず少し矛盾してしまうが、わかりやすく言えば瘴気は魔素フラッピングエーテルの反粒子だ。

 そもそも魔素フラッピングエーテルという素粒子は古くからこの惑星と共にあり魔力の素であり全ての元素を構成する内の最小単位の物質の1つであり、生物が順応してきたごく当たり前のものだ。それが特殊な反粒子で構成された物からなる瘴気なんて存在した時点で毒でしかない。


 ノルンはそう考えた。


 その反粒子を悪性魔素デスフラッピングエーテルと仮定し呼ぶこととしよう。


 ――素粒子と反粒子で対消滅させる。


 浄化ってそれでいいんじゃないの?ノルンはそんなことを考えた。

 キマイラから出る霧の様にあがる反粒子、悪性魔素デスフラッピングエーテルを魔素操作による簡易的な結界で閉じ込める。


 魔素フラッピングエーテル、対消滅は魔素操作で反粒子に同じくらいの力でぶつければそれでオッケーなのである。魔素操作が得意な人間であれば誰でも出来るレベルのものなのである。と、ノルンは思っている。

 異空間収納を開発した時点で彼女が散々やりつくした分野だ。


 女神が授けた聖女の浄化スキルも紐解けば仕組みは対消滅である。


「わわわ、ノルンちゃん!なにやってるっすか?瘴気っす、なんで集めてるっすか?」


「え、だって消えるのよね?浄化しなくていいの?だからまた現れるんじゃない?」


「そっすよ!でも浄化よりも早く消えるから無理だったんすよ!私の力が足りないせいなんすけど……あ、この状態維持してくれるなら出来るかもっす!」


 これを対消滅させたら、自分が浄化して回らなきゃいけない空気が現れるかもしれない、ノルンはそれを危惧した。


「じゃあセレスティーナ、浄化試してくれないかしら」

「いいっすけど、かなり時間かかるっすよ」

「いいのよ」

「わかったっす」


 ――浄化魔法「ピュアリフィケイション」


「あ〜3時間くらいかかりそうね〜」

「そうなんすよ〜」


 ――錬金術式 対消滅ピュアリフィケイション


 ノルンは小声で対消滅を行使した。ついでに雰囲気でピュアリフィケイションと加えて。


 悪性魔素デスフラッピングエーテル対消滅浄化し、ほぼ一瞬で消えた。


「おお〜、セレスティーナありがとう!浄化出来たわね!実験成功!」

「え!ノルンちゃん!いまなにかやったっすよね!?猫耳甜めんじゃないっすよ!実験成功ってなんすか?」

「な、なんのことかしら?」


 セレスティーナの問答にノルンは目を泳がせる。


「だっていま対消滅って」

「いってないわよ?」

「私もう聖女やめたいっす!ノルンちゃんやってくれっす!絶対ノルンちゃんなら大聖女様〜ってなるっすよ!」


 セレスティーナは聖女をぶっちゃけやりたくなかった。いや女神教皇国でなければやりたいと思うのかもしれない。セレスティーナにはセレスティーナなりの嫌嫌になる理由はあった。


 周りはなにがなんだかよくわからず、なんだなんだ?と2人を見守る。


 これでは自分が聖女にされてしまう。ノルンはセレスティーナが騒ぎ始めたことで焦り始めた。


「あ〜セレスティーナ!ごめんね!これから錬金術を教わらない?」


 錬金術を教えてあげよう作戦だ。

 無双したりイキったりドヤ顔はしたいがノルンだ。遠回りだが寿命も長そうなセレスティーナなら錬金術も覚えられる。お前が聖女としてがんばれ。そう考えた結果だった。


「なんの得があるっすか?」


 しまった!そうだよな!ノルンはもっともな質問に苦し紛れに答える。


「料理に興味ある?プリンとかも……つ、作ってあげるわよ?」


「……やるっす!絶対やるっす!女神教皇国の質素なメシはもう嫌っす!弟子になるっす!」


「弟子じゃないわよ、少し教えるだけよ」

「それを弟子っていうっすよ!うっす!お願いしゃーす!」


 セレスティーナが弟子になった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ここまで読んでくださりありがとうございます!


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ノルンがんばれ!強くいきて!

ノルンかわいい!

オリヴィアもっと出せ!

セレスティーナがんばれ!


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