12 錬金術師は困惑する
今宵はバーベキュー
月を見ながらビールやお酒でも飲みながら肉をつまむのが最高だ!
少し大人になればささやかな楽しみとして嗜む者もいるだろう。
「ぐぅあっはっはっは!ニョルンちゃんにょんでる~?私のお酒をのみらはーい、あ!これニョルンちゃんが作ってくれたおしゃけだった!わははは」
「あ、あぁ……そうね……」
表題通り、
タイトル回収!!
「いーーっくらでものめちゃう!れんきんじゅつうってしゅごーいねニョルンちゃん」
少し時間を遡る――
そんなノリで5人と5匹で晩餐は始まった。
歓迎会などといった趣もないがノルン達は皆が美味しく食べられたらなんでもよかった。
綾乃も玲も久々に濃い味付けのタレに肉をつけて食べ満足していた。
ところが、ツルマメの魔素活性化による変異種と思われる枝豆を食べた途端、綾乃がぐずりだした。大きい豆だが
「これでビールとかあれば最高なんだけどなあ!ああビールビール!もう2年も飲んでない!ビールビール!ビール……」
そう、綾乃はアルちゅ……いや大の酒が好きだった。
それを見かねたノルンも少し思うところがあったのか、地球産の麦があればあとは錬金術でどうにかなるわね。なんてことをポロっと口に出したが最後。綾乃は食いついた!
「本当に!!?ノルンちゃん!!!それ本当に!!??」
ノルンは綾乃のあまりの気迫にビクっとする。
「え、ええ……作れないことはないわよ……」
(
綾乃と名乗っているにも関わらずノルンは少女にしかみえない人物を
それもあってノルンは前世で世話になった
キャラが知っている
ノルンは自分の
そして材料さえあればつくってあげよう。懐かしい少女を見つめそう考えた。
「麦はないけど、もしかしてもしかして、カラスムギなら大量にあるんだよね!それでいける!?」
「んー稲科穀物の種があればそれっぽく糖化させて発酵させて熟成してろ過するだけよね?錬金術なら出来るわよ。ビールに近い何かになると思うけどね。まあビールなのかしらね」
「私やレイちゃん、その他にも仲間がいるんだけどね!東京で拠点を作る時にね!雑草を刈った時の廃棄物どうすればいいかわからずにマジッグバッグに詰め込んでたんだよね~!それでね!カラスムギなら沢山あるから、もしかして!!??ポップもあるよ!?」
ビールが飲みたい綾乃は必死だった!カラスムギも雑草とはいえ分類としては野生のオーツ麦である。オーツ麦が大麦や小麦にまざってビールの材料になることを知っていた。だからノルンならひょっとして!?と藁にもすがる思いでノルンの肩を両手で掴み懇願した。
その気迫にノルンはまたビクっとした。
「綾乃さん、ノルンさんびっくりしてるから落ち着いて落ち着いて」
「あら!いけない!ごめんねノルンちゃん……これが雑草なんだけど」
地球産マジッグバッグは廃棄物にも使われる!でも容量はかなり大きいみたいでノルンは感心していた。
綾乃が出した本当に山盛りな量の雑草を見上げカラスムギもそうだがメヒシバもある。
これらはお茶にも出来るのよね~とノルンは言うが
「ビール!なにとぞビールを!」
と綾乃は両手を擦り合わせ土下座してきた。
ノルンはドン引きしたがビールを急いで作ることにした。
錬金術ならあっという間だ!
カラスムギの麦芽を錬金術でより分ける。あとはもうぶっつけ本番でもそれっぽくなれば綾乃も満足するだろう。ノルンは適当に考えていた。
「え~と……βグルカンかしら?ねばっこいわね、脂質も分解して減らしてこれで無理やりモルト化すれば小麦や大麦と同じくらいに胚芽は……カラスムギ感も残しつつ、あーちょっと糖度が高いかしら……あとホップ?順番これでいいの?えーと後は錬金発酵して……あとはポーションと同じね……、えーと糖発酵でアルコール生成、濾過して、あとはこうしてこうすればビールっぽくなるかしらね?なんかシュワっとしないわね……うーん二酸化炭素吹き込もうか…………こんな感じかな?瞬間冷却してと……容器から取り出すと……おー!しゅわしゅわ!どれどれ?ぐびぐび……うーんビールっぽいかしら?ちょっと甘い感じもするけど香ばしいしこんな感じかしらね?」
様々な術式紋が光っては消えを繰り返し、特大のガラス瓶に即席錬金ビール工房。
口に泡をつけ、錬金術師は職人の様に語る。
綾乃は目を光らせ、まだかまだかとノルンを見つめる。
他の皆は気にせずに肉をつまんでいた。
ノルンにとってはビールなんてどれも同じよ!みたいなところはあった。
ビールは前世でも一口目くらいしか美味しく飲めなかったノルンだったが美味しいかマズいかはわかる。長年のポーション作りに加え、ビールでも漬物でも発酵するものは任せろ!そんな錬金術のプライドがノルンを本気にさせていた。
ラガーとかエールとか知らん。こんな感じだろ?とノルンは適当に仕上げたのではあるが、ノウハウの結集である為に無自覚にも即席なのに最強に美味しいビールを生み出していた。
「はい、出来たわよ。」
「ふ、ふうわぁぁああ……、ひっぐ、ぐす、ひぐ、どっからどうみてもビィールだ~」
綾乃は泣いた。冒険の野営中も夢にまでみたビール。
ノルンはそれをみてドン引きし困惑した。
「泡がしゅわしゅわ~、いただきまーす!ぐびー………ん!!!」
ビールなんて自分の好みがないノルンは
だから今回のぶっつけ本番ビールがマズかったら嫌だなと不安になっていた。
錬金術師としてのプライドが折れてしまう
「ん…………ん…………ん~~まーーーーい!!!」
綾乃の叫びが山に
全員があまりの気迫と声量にビクっとする。
「そ、そうよかったわ。」
「ノルンちゃん天才!本当に天才!どう?娘にならない?お姉さんに毎日つくってほしいわ~」
ノルンは苦笑いした。
(綾音は本当に綾乃さんみたいになっちゃったな……だから綾音は綾乃と名乗っているのだろうか?)
ノルンは世界がこうなった為に本物の綾乃の身に何かがあったのかもしれない。ママっ子だった綾音は母親が忘れられず、せめて自分が綾乃のフリをして綾乃のキャラになりきり、概念として綾乃を生存させているのかもしれない。
ノルンはそう思い込んでしまい勘違いしていた。
前世はこんな勘違いするキャラではない。生後15年間に記憶を取り戻すまでにだいぶ捻くれたこともあって今でもそれはおかしなベクトルで根付いていた。
「もう養子にするなら一人も二人も変わらないわ~!クーちゃんも纏めて娘にしたいわーぐびぐびぐび、ううんめーーー。これで娘が3人ね」
「ああ、そうだね綾乃さん」
ノルンは勘違いしたまま、綾乃に優しく返した。
そして
冒頭に戻る
「綾乃さん飲みすぎだよ~、ってまあ仕方ないか……綾乃さんもストレスたまってるだろうし」
玲がそう言いながら綾乃を介抱する。
「あーりゃ、玲ちゃん、あにゃたも私にょ……娘になる?」
「はいはい、でも介護になっちゃうねこれじゃ。綾音と無事会えても怒られちゃうよ?いいの?綾乃さん」
「介護してええ…………ぐーすぴーzzz」
「もー綾乃さんここで寝ないの!」
流石のノルンもおや?となった。
それでは綾音が別にいるようではないかと。
それに知っている玲はそんなことを冗談でもいう子ではない。
「おい、お前達は誰かを探してるのか?」
「えーあーうん、クーフィーちゃん……私達はね……」
玲たちは30人程度の調査クランとして関東から
道中は険しく、死人もでた。
それでも残った25人のクランでなんとか
結界を張り、認識阻害スキルを使い拠点で暮らせるようにはなったものの、死に物狂いで戦わないと生き残れない。ほとんど地獄の様な場所で震えながら調査等もいっこうに進まず、ただただ生き残る。それしか出来ない日々が続いていた。
そんな暮らしを半年ほどしていると、一人の少女が行方不明となった。
その少女を探す為に二人で一時的にクランを抜けて捜索していたらしいのだ。
「その行方不明になった子がね、綾乃さんの娘なんだ。綾音っていうんだけどね。私の友達でもある」
ノルンはまた、おや?おやおやおや?となった。
「もしかして……本当に綾乃さんなの?でも……俺のしってる綾乃さんはもっと……」
おば……、いやお姉さんで年齢通りの姿だった筈だ。
ノルンは思わず、前世の口調になってしまっていた。
「……俺の知ってる?」
「うん、その子は綾音じゃないの?綾乃さんはもっと……」
「…………もっと、おばさんだっていいたい……のかな?」
「あ、いや……」
「綾乃さんはね、職業が賢者なんだけど、魔力故のものなのか日に日に若返っていったの……」
「…………じゃあ綾乃さんなんだ……綾音は綾音は…………」
「うんそうだよこの人は綾乃さんで間違いない…………若返ったら綾音とソックリなっちゃったのには苦笑いしたけどね。綾音は捜索中、反応はあるから生きてる筈だよ。」
「綾音は生きてるんだな……良かった……」
ノルンは綾音が生きていることを知り安堵した。
「それにしてもノルンさん、貴女は誰?綾乃さんの知り合いだったの?そんな素振りもなかったのに」
ノルンは前世で身内同然である彼女達がいることもあって、綾音の名前が出て来たこともあって、思わず前世の口調で話していた。その上、何も考えず質問していたことにも気づく。
やっちまった。
ノルンとしての自分、前世としての自分は別人だ。
でも今回は前世の自分が恐ろしいほどに前に出て来たことを自覚した。
ここは仕方ないとノルンは腹を決めた。
「玲ごめん、俺、野月道場の
「は………………………………………?ノル
玲の叫びは夜の山に
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ノルンとクーフィーの活躍をもっと見たいぞ!
ノルンかわいい!クーフィーかわいい!
みんなの冒険を応援したい
という方は
★評価とフォロー、♡ください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます