17 錬金術師は帰省する1
ノルンの挨拶に固まる照人と翔。
玲はどうしようかなと考え、身内の自分が切り出すことにした。
「いや〜、叔父さん!かけ従兄ちゃん!久しぶり〜。貴方達が剣もってると怖いから仕舞ってよ〜。」
「おう、玲、よぐ来たな(よく来たね)。ゆっくりできるがわがんねばってゆっくりしてげ(玲、来てくれたんだ。ゆっくりくつろげるか、わからないが、ゆっくりしていってね)」
玲と綾乃はよく聴き取れず困惑した。
その横でノルンはニッコニコでいる。
「叔父さん何言ってるかわかんないから、よそ行きの言葉遣いで話してよ」
「ん、そ、そうか?ごほん。皆、よく来てくれたな。うちに案内するぞ」
地方独特の訛りは残しながらも照人はしっかりと、よそ行きの話し方をしてくれたおかげで玲と綾乃は聞き取ることができた。
「叔父さん、しっかり話せるじゃん!ってあれ?叔父さんなんか若くなってない?」
照人も翔も記憶よりなにか若がえってる気がする。でも綾乃を横目に玲は、あ〜そういう世界になったんだと納得した。
「ん?やっぱりそうか?うちのおっかあ……母さんも最近きれいなんだ……、あ……、貴女は綾子さんか?」
突然、話しを振られ困惑する綾乃
「あ、初めまして篠村綾乃と申します。やはりお二人ともノルくんに似てますね。綾子は私のひとつ上の姉で結構前に……亡くなりました。姉を知ってるんですね。」
「あ、あ〜、大学時代にちょっとな……でも妹っていっても……ああ俺ら若くなってるしな。昇を知ってるんですね」
「はい……、消えた瞬間を目撃しました」
「では、あの時、
「……はい」
「大変だったでしょう綾乃さん」
「はい……」
ノルンは照人と綾乃の会話に違和感を覚えた。
――消えた瞬間を目撃しました
ノルンの記憶にある自身の結末は怪我をして2年間寝たきりで生涯を終えた――消えたわけではい……やはり、この世界は……この地球は……
――2年前に分岐している
ならば、この世界の野月昇は怪我をしていない可能性もある。
生きてるのかもしれない。
ノルンはそう考えた。
「若返ったりと良い世の中になりましたね〜。」
妙な納得の仕方だが、今の世界は若返ることがある。ノルンは若返り条件が気になったがここは置いておこう。
「お父さん、かける、私はノルン、これでわかるよね?」
「わたしはノアです。」
ノルンをみて、わかるわけね〜よと思い申し訳なさそうに固まりコメカミをかく照人と翔、どこか昇ことノル従兄をみているようで玲は吹き出した。
「俺は照人、こっちは翔だ。昇の知り合いか?ゆっくりしてけ」
ノルンとノアにも自己紹介を丁寧にした。
「やっぱり親子、兄弟なんだね〜、ノル従兄ちゃんと変わんないな!」
「確かにノルくんに似てたね!!」
「ふ、悪かったな!
「あ、あ〜まあ、そのうち現れるんじゃないかな?もうここにいたりして……ぼそ」
「ん〜まあ、あいつが死ぬわけね〜よな」
ここでノルンがまた満面の笑みで照人に話しかける。
「うん、お父さん、この世界の野月昇はきっと生きてるよ。でもいつになるかわからないだろうし私が代わりに帰ってきてもいいよね?」
ノルンはこの世界、この
照人は外国人のお嬢さんだから日本語が苦手なのかな?と思い、そうかそうかと優しく返した。
ノルンはだろうな、それが普通の反応だ。と思い、やはりこの男共と語るには言葉では無理だと。深呼吸をした。
――身体強化術式 Ⅲ【
――召喚【月照緋緋彩鳥・煌】
ノルンは一振りの太刀を召喚した。
刀を腰に構え柄に手をかけゆっくりと前に出る。
照人も翔もぎょっとする。
「お父さん、剣で語り合いましょう。」
普通ならここで何言ってんだ?となるところだが、野月の男はこれで大丈夫。
「ふ、お嬢さん、わかってる口だな。だが手加減は出来るかわからねーぜ?」
照人も刀を腰に構え柄に手をかけゆっくりと前に出る。ノルンと全く同じ構えだ。
玲は月詠本家の者だがこの感覚はさっぱり理解出来ないでいた。男ってやつは、みたいな感覚である。
綾乃はよくわからないままノルンちゃんがんばれ!とノアを膝に置いて叫び出した!
「まあまあ玲ちゃんも座りなよ」
「う、うん。かけ従兄ちゃんは止めてくれないの?はいお従姉ちゃんが作ったプリン」
ノルンの作ったプリンを大量にマジッグバッグに入れた玲はプリンを
「プリンめっちゃうま……!!まあこういうのは止められない。あのお嬢さんも只者じゃない。どんな年月をどれだけ技の研鑽に注ぎ込めばあの領域に行けるのかわからないよ。というかおねえちゃんって誰だ?」
「そっか、というか、かけ従兄ちゃん普通に喋れんじゃん」
「まあ、俺も上京して大学もいってたからな。プリンもうひとつあるか?」
綾乃はノアにプリンをあ〜んさせていた。
各々がマイペースな空気の中、戦いは始まる。
「月詠流兵刀術 野月道場 免許皆伝、錬金術師ノルン・フォン・リリシュタイン 参る」
「あんたみたいなお嬢さん道場でみたことない……が、剣を交えればわかるか?
月詠流兵刀術 野月家先代当主 【剣鬼】野月照人 参る」
『『――明鏡止水』』
同時に両名が眼を閉じ、五感から魔素を含めた第六感を研ぎ澄ます。
空気の動き、眩を通した光の加減、匂い、音、魔素の動き、全てを同時に感じとる。
「うわあ、おっかねえな二人とも。明鏡止水とかぶっちゃけ無敵奥義だよね。あ、プリンなくなっちゃった。でもお従姉ちゃんがカラス麦とかイネ科雑草から作った激ウマ謎レーションがあるんだよな。」
「ボリボリ、なんだこれ、おねえちゃんって人はすごいな。普通に前みたいな世の中でも売れそうだな。うまい」
「お従姉ちゃんはあの人だよ。ノルンお従姉ちゃん」
「まあ日本語うまいな、でも野月道場にあんな子いなかったぞ」
戦う両名は動かないなりに、攻防を繰り返していた。少し筋肉を張らせてフェイントをかけて攻撃を誘ったり、外野の会話の音に紛れ相手に気取られぬ様にじりじり詰めたりと地味な攻防を繰り返した。
だがここで一羽の鳥が頭上を飛びノルンの真上で糞を撒いた。
明鏡止水中のノルンは慌てないが、コンマの世界で考えた。
(これってさ、私が動かないとフンつくじゃん、でも動くと不利じゃん?あれ?フンついた方が屈辱的では?ん、あと3センチくらいで頭に鳥のフンつくの?え、まってまってやめてよ。でもフンついたら音で動いたと思って好機と勘違いしそうだよね?このフンにはあの距離ならお父さんも気づいてないから。いや、フンだよ?フンまみれで有利にもちこみたい?あと1.5センチか〜、いや流石にフンまみれはないわな)
「うわ!ばっちい!!あっぶね!」
ぎりぎりで鳥のフンを避けるノルン。
それ好機とみた照人は俊足で近づく。
「うわ、こっちもあぶねえ」
上段から袈裟斬りが襲う。
流すには体勢がわるい!
ガキン!と音がなる。
ノルンが刀を横にして刀を受け止める形だ。
「なんでその刀折れねえんだよ。ワァのが欠けたじゃねえがぁ!(俺のが欠けたじゃないか)」
と連撃を浴びせられるが、なんとか剣先で流し躱す。
永いことノルンは技を磨いてきたにも関わらず、拮抗していた。超神速モードを使えば技を忘れて勝てるかもしれない。だがこれは、勝負ではなく技での語り合いだ。勝ち負けにこだわらず打ち合わなければならない。
躱した先で後ろを照人の横に移動し手首を器用に回転させ横後ろから首を狙うが、この体勢からも照人は難なく峰でガードする。
打ち合いはよりは躱した方が刀的には良いのだが、打ち合いの方が最短で相手を殺すことを目的とした動作になれる為に、月詠流としては正解なのである。戦場で刀がこわれたら拾えばいい。
恐れるな、戦え!剣が折れてもどうにか殺せ!
それが月詠流である。
だがノルンは、というより野月昇は甘かった。剣術の才能自体はあったが、甘さ故に恐れ、それが弱さとなり戦場では通じない場合がある。
だから当時大学三年だった野月昇は自身に才能がないと判断し、習い事程度にして就職活動をしていた。
照人にも逃げただの、なんだの言われた事さえある。
2年前までのアレを分岐点としてそれまでが共通なのであれば、この世界の
でも今は死線を乗り越えてきた彼女だ。
打ち合うことに躊躇いを持たない。
数えきれないほどの打ち合いを繰り返し、とうとう
バキン
「あ〜あ、打ったばかりなのにもうダメなっちゃった。」
照人は息も乱さずに残念そうに折れた刀身を眺める。
「あ、ごめん、お父さん」
「はは、でもその刀すげえな。刃こぼれもしてねえべや。(刃こぼれすらしてないじゃん)」
「でしょ〜、これワァが作ったんだよ〜(これ私が作ったんだよ)」
「は〜、大したもんだな……でも強くなったな……
「……お父さん、ただいま」
「ああ、おかえり……細けえ話は置いで今日はお母さんのご飯食べでいけ、まあ後は泊まってゆっくりしてげ(ゆっくりしていってね)」
「うん、ありがと!」
ノルンは長く永い時間をかけようやく帰省した。
「玲ちゃん玲ちゃん、聞き間違えじゃなければさ、ノルくんのお父さんがノルンちゃんの事、ノボルって呼んでたんだけど」
「まあ綾乃さん、夜にでもビールのみながら聞けば?」
「そうだったビール!ビールがあった!やった〜!」
ビールコールを楽しくしてると照人がビールあるのか?と食いつく。
今日はビール祭りだ。
「まああの剣は弟と同じだったな。なるほどな……色々あったんだろうな……」
玲が先日したのと同じ誤解をして複雑な心境でいる兄こと剣神
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ノルンとクーフィーの活躍をもっと見たいぞ!
ノルンかわいい!クーフィーかわいい!
ノアかわいい!
兄 翔がんばれ!照人がんばれ!
みんなの冒険を応援したい
という方は
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