15 錬金術師は名付ける
20☓☓年5月10日正午0時
バーベキューだったり寝たのが遅かったこともあり、お昼時である今、皆ぞろぞろと起きだしてきた。
「ゴ、ゴゴッゴッゴッゥォオ〜〜!!」
昨日ノルンが捕獲してきた
その鳴き声を聴いた一人の勇者が剣を持ち駆けつけ、
「ゴッゴッゴッ」
無精卵の卵が何個か落ちている様だ。
わかりやすく言えば、ダチョウの卵サイズの卵だ。
「なんでこんなところにモンスターが……柵……?ここには元々、何かが飼育されていたのか……?それをモンスターが捕食……おのれ!モンスターめ!!うおぉおおお!!」
地球人類の想像としては特に間違ってはいないし、そう思うのも無理はないだろう。
勇者は勇者的身体強化でオーラを放ち、剣を構え柵の中へ駆け出した。
「くらえ!シャイニングスラァ!!「ゴゲェ!!」ぐふっぁああ!!」
ドゴォオン!!メキメキメキメキぐしゃ
勇者は
内臓は破裂し、肋骨は粉砕、右手は千切れそうで誰もがもうダメだ、と思ってしまうだろう。
今の現地球人類では無理ゲーな地の魔モノである。いわばスライムみたいな雑魚だと思って甜めプしたら痛い目にあった、といったところだろうか。
そんな時に3人の少女にしか見えない絶世の美貌を持つ女が
来た瞬間、誰かが洞窟近くの壁にグチャっと叩きつけられたのを目撃してしまった。
「あ!!あ〜……柵に入っちゃったのかしら……良かったまだ生きてるわね。アンナ、いまの貴女の
「え!?あ〜、わかりました!!」
「しかし、鶏にやられたのか」
クーフィーは鶏程度にやられた
――神話級魔法【ガディスヒール】
アンナは治療魔法を唱えた。
四肢欠損、内臓破裂、骨折などあらゆるものが光と共に治療された。
血などは失われたままで貧血状態である。
「ほら
「これは……アンナさん、いやアンナ様でしたよね?貴女が治してくれたのですか?もうダメだと思ったのに……貴女も女神様なのでしょうか?」
女神の様なという表現ではあるが
アンナが女神といえば女神なのは間違いないがアンナは面倒臭そうだと思い考える。
アンナはピ〜ンと閃いた。
「私はノルンさんやクーフィーさんの助手ですよ。あの方々には
そういった信仰はあの2人に向けよう作戦だ。
「そうですかアンナ様、ですがありがとうございます。」
「はい、感謝は受け取っておきます」
「しかし、あのモンスターはノルン様の家畜だったのですね……私はまた勘違いを……」
「あ、あ〜まあ仕方ないですよ……」
「二つとれたわ〜」
「おねえちゃん私も私も」
「はい、今度はクーちゃんの番ね」
「えへへ私の番〜」
クーフィーがサッと網を柵の中に伸ばす。
その瞬間に超神速で卵を網でかっさらう。
網の中には卵が3つ。
「クーちゃんには勝てないわね」
「えへへ、この遊び面白い。」
「よく3つ取れたわね〜偉い偉い」
「えへへへ〜」
それを見ていた、勇者はそのクーフィーの神速に驚愕していた。
「女神様の姉妹……」
夢結は両手を合わせ祈るように2人を見つめる。
そんな夢結を見てアンナはうわ……と思いながらもみんながいるコテージ前へ戻ろうと
昼ご飯は白身をお米代わりにしたオムライスの様なオムレツである。トマトがなく、醤油をベースとした酸味の効いた旨味ソースで代用していた。
綾乃はメンバーが増えて、
「私が寝てる間になにが!?」
「綾乃さんおはようっす〜」
「世麗奈ちゃん!?」
「色々あったんすよ〜」
「そう……」
そんな綾乃の困惑もよそに昼食は始まった。涙を流しオムレツを頬張る者、無言でガツガツと食べる者、もっちゃもっちゃと口につめこみ食べる
ノルンに色々教わって此処に住んでもいいんじゃね?
そもそも玲達も関東冒険者ギルドの調査名目で本州最北端に来ているに過ぎない。戻ったところで権力争いに巻き込まれ面倒くさい。こんな世になっても人間同士の軋轢は以前と変わらない。
それに、戻ろうと思っても物資も不足し既に袋小路な状況でこの緋神山地から身動きが取れない。
もしもノルンが此処で生きていける術を教えてくれるなら此処でも良い。
ノルンやクーフィーは彼女達に少しだけ希望を持たせ、同時に願望も持たせていた。
極限状態だった彼女達はそんな発想に至る
綾乃やここにはいない綾音、そして玲の目的はまた違うのだが綾乃と玲は世話になる気が満々だった。特に玲はノルンの正体を知っている為に甘えさせてもらおう!と考えていた。
「ねえねえお
その発言に綾乃はギョっとする。話がついて行けてないがおねえちゃん呼びを始めた玲が新鮮だった。しかもなんか身内、家族と話すような安心したような雰囲気を感じていた。
「玲ちゃん、ノルンちゃんと仲良くなりすぎ〜!お姉さん嫉妬しちゃう〜!」
「え、あ〜……まあお
「ん〜、まあ……夜にでも話すよ綾乃さん……」
ノルンの話し方に違和感を持った綾乃だったが神妙でどこか申し訳なさそうな表情に懐かしさを覚えた。
「わかった……絶対におしえてね!ノル……ンちゃん……ビール飲みながら話しましょ!」
「う、うん、わかったよ……それにしても貴女達の拠点って近いのよね?」
「近いっちゃ近いかな〜10kmくらいかなあ?」
ノルンが通常状態で歩くには少し疲れる距離だった。
「そ〜、結構遠いわね〜」
「おねえちゃん私いきたいな〜。シャロか猫たちに乗せてもらえばいいよ。私も乗るし。」
「う〜んそうねシャロお願いできるかしら」
クーフィーが行きたいと言えばノルンにとっては決定事項だ。
『大丈夫ですよノルン様、私達を使ってください。でも龍のあの子が少し元気ないので少し見てもらっても良いですか?』
龍を探せば、気配を消して洞窟に引きこもっている様だ。尻尾だけは洞窟から出ていた。人間が増えたからだろうか?
「わかったわ!私は龍のあの子と話してみるわ!あの子に乗る」
「はい!はい!私も龍に乗りたいです!」
綾乃はここぞとばかりに主張する。
ファンタジーといえば龍、なんとなくその気持ちがわかるノルンは承諾した。
「綾乃さんも一緒に乗りたいのね、一緒に乗ろう?」
「やった〜!」
玲は猫好きの為に猫に乗せてもらおうとしたが綾乃に引っ張られて龍のところまできた。
世麗奈は茜のことが気にいったようで、語尾がニャなところがポイントらしい。
他は徒歩だ。
ノルンは龍と精神パスを繋ぎ会話をする。
「ちょっとお出かけするのだけど、貴女の背中に乗せてもらえないかしら?」
『ノルン様でしたよね?クーフィー様のお姉さまの……それに玲さん、綾乃さんでしたっけ。大丈夫ですよ』
「そうよ〜」
「声がかわいい。君、この前の怪我は治った?」
「はい、もう治っちゃいました」
「良かった」
のしのしと洞窟から出て背を下ろし「乗ってください」と促す。それでもクーフィーを除けば背の低さを争う3人には高い。
ノルンは仕方なく地味に身体が痛い
玲は身体能力の高さ故に当たり前に飛び乗り。
綾乃もなんとかノソノソと上りなんとか座れた。
シートベルトはないがノルンは魔素を操作し簡易的な結界を見えないシートベルトの様に固定した。
『飛びますね』
バサァと羽根を広げ龍は浮く。意外にも周りは風などの影響を受けていない。ドラゴン特有の魔力操作かスキルによるものだろう。
「うひゃ〜浮いた!すご!」
綾乃は大興奮だ!玲は少しビビりながらも無言で謎の感動に浸っていた。
ドラゴンに乗ったんだぜ!これは自慢できるステータスだ!玲はそう考え静かに
みんながいる場所まで龍は近づく。
「さあ、いくわよ〜!」
龍にビビる者、憧れる者、龍いたんだと今知って顔を青くするものもいた。
玲が道を案内しつつ龍は拠点は向かう。
「ゆっくりでいいわよ、ゆっくりで」
『はい、わかりました』
「洞窟の中に入っちゃってたけど、やっぱり、人が増えちゃって嫌だった?」
『う〜んそうですね〜洞窟にいたのはそれがありますね……』
「元気ないって聞いてたのだけどやっぱり人間がいっぱいだと嫌かしら?」
『いえ、いまは慣れたら大丈夫だと思います。こうノルン様達を乗せてますし。でも……』
「でも?」
『シャルロッテちゃんや茜ちゃんが自慢するんですよ……名前を付けて貰ったって……それが羨ましくて……』
ノルンは自称「我」呼びと語尾に「ニャ」の2匹にイキり倒される龍を想像した。
「あ……あ〜〜〜貴女、名前が欲しいの?」
『はい』
クーフィーが一度名前を付けようとも考えたが無理強いをしたくないと名前をつけなかった。内気な彼女は自分からはお願い出来ない。
だが、シャルロッテの目論見ではあるが今はお膳立てが整った
(シャロも優しいわね)
「私が名付けても良いのかしら?」
『はい、それはノルン様の眷属になれるということで良いですか?』
「うふふ、いいわよ」
心優しそうな子だし、クーフィーと出会った頃を思い出しノルンも満更では無かった。
「ノルンちゃん!なんて名前にするの!?眷属って!?」
「う〜ん、そうね〜……貴女の名前は【ノア】よ」
『あ、ありがとうございます!私はノア、えへへへ〜やった〜』
その瞬間、ノアの周りに術式紋の様な何かが光る。錬金術式とは違うこの世界のステータスシステムに関連する紋様だ。
「わ、まぶしい!ノルンちゃんなにこれ!」
光の粒子がノアを包み雲散しノアは姿を現わした。
シャルロッテと違い大きさは変わらない。
だが色は黒ではなく
肌触りはゴツゴツしたものではなくスウェードのような滑らかさがあり毛のようなもので覆われていた。
「エンシェントスカーレットドラゴンとかそんな感じかしらね」
『なにか力が漲るようです。ふあ〜!!』
とノアは興奮し上空へ飛び上がる。
空へ高速で移動し天の雲を突き破り、下降しアクロバット飛行を繰り返す。
「ノア!ちょっとちょっと!」
思わずノルンはノアを制止する。
『あ、ごめんなさい。興奮しちゃいました!でも嬉しいです!素敵な名前をありがとうございます!』
「ふふ、私も喜んでくれてうれしいわ〜、ね!玲も綾乃さんもそう思うでしょ……?あれ?」
2人の返事がない。
後ろを振り返れば二人とも目を回し気絶していた。
「わ、大丈夫?二人とも」
『わ、ごめんなさい!』
それに此処がどこかわからないし、二人とも気を失って聞くに聞けない。
ノルンはクーフィーに通信を入れる。
『クーちゃん!いまどこ?』
『おねえちゃん?いま龍が光って緋くなってから見失なっちゃったよ、どこ〜?』
『それがわからないのよね……』
見渡せば、海岸が見える。
日本海近くだろうか?ノルンは久々にみた日本の海に懐かしさを覚える。
「ノア!あっちひとまず向かって!どこかでいったん降りるわよ」
『わ、わかりました〜』
『クーちゃんごめん!先に行ってて〜、ちょっと2人が気を失っちゃってさ。回復してから向かうわね』
『ご、ごめんなさい〜』
『ノアっていう名前になったのか〜良い名前だな。ドンマイだぞ。おねえちゃん了解』
海に近づけば海岸沿いの国道が見える。
「あそこは……」
ノルンがどこか見覚えのある海岸をみつけ呟いた。
見間違えるわけがない。上京するまでに生まれ育った場所だ。
海岸に沿う様に国道が伸び、ところどころ荒れていて、壊れた車が並んでいる。
海岸沿いの家もどこも荒れ果ている。
魔モノ、またはかつて地球の野生動物であった魔獣にやられたのだろうか?
そこから海と山に挟まれた場所に移動すれば丘になっていて、平地が広がる。そこにはかつて集落や田んぼが広がっていた。今は田んぼは雑草が広がり、人の営みがまるで感じられない。家屋も海岸線同様に荒れ果てているが割と形を成している。
ここは元々過疎化により人口はだいぶすくなっていた場所だ。かつて閉校になった小学校で古いのもあるが校舎はまるで破壊されたように半壊していた。
グラウンドは何故か雑草があまり生えておらず拓けた場所になっている。
「ノア、あそこに降りましょう」
『わかりました〜』
ここはノルンの前世、
「帰ってきたよ……」
彼女は校舎を見上げ物憂げな表情で呟いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ノルンとクーフィーの活躍をもっと見たいぞ!
ノアかわいい!
ノルンかわいい!クーフィーかわいい!
みんなの冒険を応援したい
という方は
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