【ノルン - 6】少女は戦う
※2 少女は夜逃げする から続くノルンの昔話です。【ノルン - 13】まであります。
「本当にありがとうごじゃいます!もぐもぐありあほうほあいあふ!ふまふまふまーい!もぐもぐ、う!ごくごくごく、ぷはー!本当にうめえ、死ぬかと思ったっすー!!」
猫耳の少女セレスティーナはどうやら空腹で空腹で死を覚悟したらしい。だが獣人故の嗅覚で食べ物の臭いを嗅ぎ取り、なけなしの体力を使いノルン達のいるところまでやってきたそうだ。
ひとまずノルンがポーションを与え、マジッグバッグに詰め込んでいた食材で野営料理を作り与えていた。
何となくだが転生大聖女とかいってたしこいつ前世日本人だろ、とノルンは思っていた。普通なら自分と同じ日本人?うわあ初めてみたー!となりそうなところ、この無感動はセレスティーナがノルンより5cm背が高いところであることが大きい。
ノルンにとっては背は重要だ。同じ日本からの転生者なのにズルい!ノルンは大人気なくなっていた。15歳の時に記憶が戻るまでに身に付けたこの世界での価値観はかなり精神に根付いてしまっていた。
「これ生姜焼き定食っすよね。ノルンちゃんが作ってくれたのって。もしかして日本人っすか?」
「時間をかければ文明なんて似てくるものじゃないの?」
文明なんてビルも建てば首都高速似た交通機構になど似たりもしてくるものだ。
「いやいやいや、米っすよ。ノルンちゃん米とかってこの世界で初めてみたし、この味付け絶対前世日本人っすよね。」
「結構その辺に生えてたわよ、改良したのよ」
オリヴィア達のいる前で前世云々の話を始めたセレスティーナに、ノルンはおいおい何言い始めるんだこいつはとなっていた。
「セレスティーナ、その話はやめなさい。わかるわよね?」
「なんでっすか?あーあー!無双できなくなっちゃいますもんね、わかるっす」
「くっ…………!」
半分は図星、半分はそうじゃねえと相反した感情が混じりノルンは沸点が下がるような感覚を味わった。
『おい、やめろよ。オリヴィア達にはそのこと話してねえんだから、これは異世界風には言えば念話みたいなもの。思考して口に出さず話せ』
『お、なんすか、念話っすか。そんなスキルもあるんですね。レベルどのくらいまでいけば貰えるんっすかね?それに、なんか今の喋り方男の子みたいっすね!か~っくいいー!!!』
ノルンはなんとなくイラっとする。
そうこれはいままでのチヤホヤされきた何故か優しい世界とは違った久しぶりの感情。
故に自身でも感情の整理がつけられないでいた。
こちらの世界で初めてあった転生者、前世日本人であろう少女はズケズケとノルンの秘密の領域に踏み込んでくる。ノルンにとって、これは小学生時代に同級生が勝手に家のドアを開け、勝手に自分の家に不法侵入し、ロールプレイングゲームを楽しみたい一人の時間とクリアしていない自分の楽しみをネタバレして壊していくアレに似た感覚だった。
1300年以上も生きているノルンにとっては小娘も同然だ。でも前世日本人であること、今世での感覚として自分より5cmも背が高いことで、ノルンはいつもと違う感情を呼び起こしていた。大聖女などと自分のキャラ被り的ところと女神ノエルから与えられた才能に対する嫉妬だ。あと身長。更に身長、ん〜やっぱり身長かな〜といったくらいの嫉妬だ。
『む、まあいいじゃない。まずはひとまずは前世云々の話は出すのはやめなさい。このまま食料も渡さず放りだすわよ』
『あ、それはごめんなさいっす、もうしません。ごめんなさい』
『わかればいいわ。それにしても』
「獣人ってこの世界にいたのね。600年前はそんなのいなかったしその前の700年間でも見たことも聞いたこともなかったわ。」
お、そういう長生き設定っすか?自分嫌いじゃないっすと悪気もなくいうセレスティーナを、キッとノルンが睨みつけているとオリヴィアが口を開く。
「あ、あ~大戦での遺産といいますか、軍事的に別の国で生み出されたアレですね……他にもエルダーフェアリーといった魔力操作に長けた種族や魔獣の要素を受けついだ獣人族がいます。」
「エルダーフェアリー…………それってエルフ……?」
「お、ノルンちゃんやっぱりわかってるっすね!戦争の話は伝承でしかしらないっすけど私はハイエルフと猫耳獣人族のハーフっす。私はまだ17歳っすけど理論上は数千年単位で生きられるはずっす。そう聞いてるだけっすけど」
といってセレスティーナは綺麗な銀髪をかき分け少しだけ尖った人の耳を見せてくる。
この世界の獣人は4つ耳がある。
くそ、いろんな要素てんこもりズルいなこいつとノルンは妬みながらも、旧文明はそこまで技術力があったのかと感心する。と同時に戦争の遺産であると考えると悲しくなった。
ノルン自身も人間の遺伝子における魔素観点での改造、他動物から遺伝子を持ち込むなどデザインヒューマンの理論だけは研究していた。それは遠隔操作する為に意思を持たない義体と呼ばれる生体人形を作る為の過程で研究した成果だった。その理論も100あるうち1を与えていただけなのに発展させ戦争に使われた。
そう考えるとノルンにまた鬱々とした感情が湧いてくる。
「ノルンちゃん元気ないっすか?なら面白い話をするっす。実は私、追われてるっす。」
「……追われてる?」
こいつはなんだ、食い逃げでもしてきたのか?とノルンは思っていたのだが先ほどから殺気を抑えられないお粗末な気配が20ほどあるのには気付いていた。
オリヴィアをはじめマリーとガーネットも警戒しマジックバッグから剣を取り出していた。
「オリヴィアさんにマリーさんにガーネットさん放つオーラというか私そういうの見えるんすけど、凄いっすね。」
伊達に世界を牛耳る結社である商会ヴァルキュリアのトップである3人。
初代は騎士だったこともあり剣術は商会職員であれば必須である。魔素を操作する錬金術を簡易化した魔力操作と術式による魔法、魔術なども必須だ。
当代ガーネットに至ってはノエルより賜ったスキルは剣聖、マリーに至っては剣姫である。
更に転生を繰り返すオリヴィアは経験値が高く二人よりも実力は上だった。
ここでノルンは3人に任せておけば安泰だろうと思った。
でもまてよ?ここらで私が一回無双してみせようか。
セレスティーナという同郷なのにズルい存在にちょっと気に食わないなと大人気の無い考えに支配されていたノルンはここで思った。悪ふざけで作ったファンネルによる無属性魔法ビームで技術無双しても良いがそれでは芸がない。人里に下りずに森で暮らした600年は研究ばかりやっていたわけではない。
彼女は非力故に今世では数百年と刀を振るえなかったが今は振るう余裕がある。ステータス上、攻撃、防御ともに非力でも戦える術はある。
彼女はこれでも前世の頃は
「3人とも、私も600年間引き籠ってると身体が鈍っちゃってね。私に任せてもらっても良いかしら?月詠流の錆にしてあげるわ」
「お、いいっすね後で設定を詳しく聞きたいっす……ん?今、
「いや、ノルン様弱いのに無茶しないでくださいよー。転生繰り返して強くなった私、いや、私達に任せてください」
「そ、そうです、ノルン様はあまり、その……後衛向きと聞いております。」
「我らにお任せください!」
「いいの!私がやるの!」
と言い合っているとその集団はお粗末に姿を現しはじめた。
ザザと音を立てながら。
音を立てても蹂躙できる、そう考えているのだろう。とノルン達は予想した。
パッとみた感じから男が14人、女が6人の冒険者の様な集団だった。
「うちの国の者達ではありませんね……どうやって忍びこんだんだか」
オリヴィアが何かしらの魔力型術式を発動し集団を解析し息混じりにつぶやく。
オリヴィアが逞しくなっているしなんかそれっぽいセリフをさりげなく呟いた件についてノルンは焦った。
(なんかかっこいい!何を解析したんだ!?)
出番を奪われる前、自分がやらなきゃ!!そう考えたノルンは先手必勝で状況を開始する。
「あなたたち、殺気が駄々洩れよ。」
オリヴィアは動画撮影を開始した。
直後にノルンは錬金術式を発動した。
――身体強化術式【
不老不死故に切っても刃が通り切った時点で回復しきるほどの超回復力を持つノルンだけが使える身体強化術式。簡単に脳のリミッターを解除し火事場の馬鹿力をだす力技である。元々が非力すぎるのでそれを何倍かにしたところで常人レベルまでだが力を引き上げることができる。その上に戦士系の人がスキル使う通常の身体強化を解析し錬金術で再現しものを重ねがけし、常人よりも力が強いくらいまで引き上げられていた。
前世から天才と比べて凡才、加えて非力なノルンは長生きという才能で出来ないことを可能にしていた。
これで刀を持てる!
――召喚『
引き籠り中に開発した異空間収納から取り出しただけなのだが、光を放ち粒子が形を形成し鞘に納められた刀が召喚されたかの様にみえるエフェクト術式である。ヴァージョン違いで鞘から抜かれた状態の術式もある。これは竹光である為、殺傷能力はものすごく低い。見た目だけは金属に見える様にしている為、見た目だけは妖艶な光を放つ日本刀だ。
初めて人前でやってみたノルンは緊張と興奮から若干照れ顔だ。これで自分の流れだ!と脳内で叫ぶ。
彼女の
ノルンは刀を腰に構え柄に手をかけゆっくりと前に出る。
「月詠流兵刀術免許皆伝、ノルン・フォン・リリシュタイン。参る」
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ここまで読んでくださりありがとうございます!
ノルンを応援したい!
ノルンがんばれ!強くいきて!
ノルンかわいい!
オリヴィアもっと出せ!
セレスティーナがんばれ!
という方は
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