9 錬金術師は再会する

 この世界が、この地球が彼女達はひたすらと生きる為に努力をした。まるでロールプレイングゲームの様にモンスターを倒すことでレベルアップし、スキルも覚えていくし強くなっていく。

 何故世界がこうなってしまったのかも、わからないまま生き残る為にひたすらと戦い抜いた。戦い抜いて現在の地球、そして日本の関東近辺では最強クラスとなった彼女達も、本州最北端のこの地で死を覚悟した事は何度もあった。

 今回の凶悪なドラゴンでは今度こそダメだと思っていた。


 しかし突如現れた、この世の者とは思えないほどに美しい少女。言葉の訛りが日本語を操り華麗にして可憐、そんな少女に助けられ今回もなんとか生き延びることが出来た。


(あの構えは居合い抜刀にしかみえなかった……それに……)


 日本人には到底見えない小さな女のコがドラゴンを斬った。それも気になるが一人で一体どうやって……玲は考えることがありすぎてどれから考えたらいいのかまとめられない。簡単に困惑していた。


 その時、何かが近づいてくる……あれは?


「猫ちゃん!!」


 立派な緋い毛並みを揺らした大きな猫ちゃんが近づいてきて玲は興奮した。


 おや?


 誰かが猫ちゃんに跨がっている様だ。


 あかい髪をあかあかく煌めかせ揺らし近づいてくる。さっき現れた小さな女のコと同じ髪の色だ。


「くぅーちゅあーん!!ちゅおってょはぁあういゆお~!」


 日本語っぽい気がするが物凄く聴き取りずらい。


「おんぬぇーちゅあん!」『おねーちゃん!』


 どうやらクーフィーのお姉さんらしい、というのは聞くまでもなく、見た瞬間にわかった。クーフィーのお姉さんは猫ちゃんから降りてクーフィーに駆け寄る。背丈は玲や綾乃と同じくらい。クーフィーとの差は頭1つと半分くらいだろうか?

 観察し玲は気付いた。

 クーフィーとクーフィーのお姉さんは背丈が違うだけで瓜二つだ。クーフィーが成長すれば見分けが使ないのでは?などと考えながらも身内にもはあるし、と綾乃を横目にみながらそっと胸に閉じた。


 それよりも猫ちゃん猫ちゃん!と新たな猫ちゃんをみると既に自分の猫が近寄っていた。

『わあ!なんか小さくなってるニャ!』

『私達と同じくらいですね?』

『でも僕達より強そう』

「ぐるるるるる」

『シャルロッテ!?かわいい名前ニャ!』


 どうやらシャルロッテという名前らしい。玲はもう疲れなどどうでも良いくらいに興奮して、シャルロッテに近寄っていく。


「シャルロッテちゃんっていうの?私とお友達になりましょう?あれ?さっきはぐれた時にいた大きかった猫ちゃん?小さくなった?」

「そうですよ。彼女はなんとクーフィーさんの眷属になって進化したんですよ」

 どうやらシャルロッテに跨がっていたのはクーフィーのお姉さんだけではなくもう一人いたみたいだ。


「貴女は……」


 碧みがかったプラチナカラーの髪色でサイドテイルに纏めた可憐な美人。その少女はシャルロッテから降り微笑む。


「初めまして、私はアンナと申します」

「初めまして、玲です。あれ?日本語お上手ですね?」

「まあ私は魔法で翻訳してますので」

「ほえ〜、そんな魔法が……」

 背丈はこの子も自分や綾乃と同じくらいで、玲基準でで玲は安堵した。


 背丈の差は人間関係に深刻な影響を与える。と玲は考えている


「シャルロッテちゃんはクーフィーちゃんの眷属なんですか?」

「そうですね、クーフィーさんの眷属となったことでエンシェントスカーレットパンサーとなりました。鑑定しておみせしますね」

「エンシェント……」


 玲はアンナに鑑定結果をみせてもらう。


「あ……」


 ステータスがおかしいのはまあ良い。


「もしかして眷属だからテイム……できない?」


「あ、他の猫さん達はテイムされてるんですね?眷属化とテイムは別ですよ。シャルロッテさんが良ければテイム出来る筈です。まあ魔獣とお話出来る程度のスキルですけどね」


 というワードは本来気にする部分ではあるのだが、玲はテイムばかりを気にしていた。どうせならシャルロッテもテイムしたい。


『シャルロッテもテイムされるニャ。ご主人はたくさん遊んでくれるニャ』

 茜がシャルロッテを勧誘する。

『そうですよ、一緒にテイムされましょう』

『撫でてくれるよ』

 ユキも皐月も後押しする


「ぐるるるるる、ぐるるるるる……」

『なんでニャ……1回なでて貰うといいニャ……こいつ真面目すぎるから1回撫でてくれにゃ』

「撫でる撫でる!!」

「ぐ?ぐるるるるる?」

 玲の勢いにシャルロッテはびくっとする。


「ぐ……ごろごろにゃ〜」

「ここかな?ここかな〜?ここがいいのかな~?」

 シャルロッテは玲のモフテクに堕ちた。


「玲さん、凄い才能ですね……あ、テイム出来そうですよ」

「ん〜やった!テイム!」


『あ〜!これはいけない!これは……これは……!あれ?もしかして我、テイムされた?』

「よろしくね〜シャロちゃん!ちゅっちゅっ!!」

『我はクーフィー様の眷属だが……まあ仕方ない……』

「やった〜〜!!!」

『ご主人私もニャ』『ご主人私もお願いします』『僕も』

 玲はだいぶ興奮していた。

 茜もユキも皐月もご主人と呼ぶが、そこに主従関係はない。名付け親であるからこその特権だ。


 一方、綾乃は

 

「わ〜!わ〜!美少女ちゃん!お姉さん!?絶対お姉さん!なら〜私のお姉さん!いや、私がお姉さん!!」


 超絶美少女!綾乃の娘にしたいランキングダントツでトップに躍り出たクーフィー。そんなクーフィーをそのまま頭ひとつ分くらい背を高くした様な超絶美少女が現れた。文字通り騒がしく踊り興奮していた。

 背丈は自身と同じくらい、これは仲良くするしかない!綾乃は恋愛に関してはノーマルだがかわいい女の子が大好きだった。


 ノルンはノルンでどこかその騒がしさに懐かしさを感じていた。でもあまりの気迫に後退あとずさってしまった。それに思っていた地球人第一号となんか違った為にフレンドリーにいくつもりが困惑してしまった。

 更には訛りが酷く聴こえたのもあって、ビビリ散らしていた。


『おねえちゃん、地球の言葉なまり酷いけど同じ言語だよね?』

『うん……日本語の筈なんだけどね……』


 ノルンは気付いていない。ノルンは惑星ノエルでとある一件で日本語を広めて惑星の公用語として使ってきた。

 日本では数十年ちょっと経っただけで言葉が古いと感じることはある。例えば50年前のテレビのナレーションの喋り方をみる。現代と比べるとやはりなんか古いしなんか違和感を感じることもある。それが江戸時代や室町時代などになるとパッと聴くと全然違う言語に感じてしまうこともだろう。そのくらいに言語というものは変わってしまうものだ。



『クーちゃん、最後に言語チューニングしたのいつだっけ?』

『500年前くらいじゃなかったっけ?』

『あ〜……クーちゃん……訛ってるの私達かもよ……?というか絶対にそうなのよね』


 惑星ノエルでも年月を追うごとに度々、訛りの壁が発生していた。故に度々、惑星規模で言語訛りを調整して訛らない様にしてきたのだ。それが500年以上も放置していた為に自身が訛ってることにも気づかないでいた。


『綾乃、おねえちゃんともパス繋ぐぞ〜』

「ほえ?」

 ノルンはクーフィーから綾乃という名前を聞いておや?とは思った。でも日本ではよくある名前だしと思いひとまずは置いておくことにした。

『初めまして〜ノルンです。ちょっと私達訛りが酷いから少し言語認識について調整するね』

「ノルンちゃん!?ノルンちゃんっていうの!?私は綾乃!よろしくね!」


 綾乃の勢いにビクっとしつつも言語調整を開始した。

 これも錬金術の延長線上にある技術だ。精神パスを繋いで意訳翻訳された通信会話をダイレクトに耳で聴き取り口で発生する力技である。その内、慣れてくれば言語調整状態を解除してもそのまま問題なく会話出来るだろう。


 アンナの魔法翻訳と違いアテレコ状態にならずしっかり日本語を喋っている為に口の動きと聴こえる言語が一致していて違和感がないのがメリットだ。


「あ、あ、あ、あ〜、しっかり話せているかしら?」

「あ〜〜〜、綾乃、大丈夫そうか?」

「……わ〜〜!可愛い声!二人ともしっかり話せてるよ!お姉さん感激!」

 綾乃がすかさずクーフィーの頭を撫でる。クーフィーはビクっとするがまあ悪い気はしないのでそのまま撫でさせた。


「あらクーちゃんがそのまま撫でさせるなんて珍しいわね〜」

「ん、まあそういう時もある」


 クーフィーを撫でてご満悦だった綾乃だが――


「あ、あれ?」


 綾乃は視界がぼやけ、地震の様な、世界が回るような感覚をあじわう。世界が回っているのではなく、綾乃が目を回していたのだった。そのまま倒れ、綾乃は意識を失う。

 クーフィーが身体を支え、ゆっくりと寝かす。


「玲さん!?」


 向こうでも倒れた様だ。

 どうしたのだろう?クーフィーがささっとでバイタルを確認し異常はなさそうだがどうやら疲労の様だ。


「綾乃はこういう顔なんだな」


 倒れた勢いでマスクや外套のフードが取れてしまった様だ。

 ノルンはまじまじと綾乃を見つめた。


「あ、あれ?綾乃って……綾乃さん!?いや……違う、綾音!?」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ここまで読んでくださりありがとうございます!


ノルンとクーフィーの活躍をもっと見たいぞ!

ノルンかわいい!クーフィーかわいい!


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