ソロライブ
インスタ
流れというものは存在する。
その流れに乗れるかが芸能の道では大事になってくる。
そういう意味では、流れは俺達に来ていた。
クリスマスライブに、とあるインフルエンサーが来ており、俺達の歌を気に入ってくれ、自身のSNSで紹介してくれた。
それが俗に言うバズリというやつになったのだ。
冬休み明け、俺と響は登校するやいなやクラスメイト達から囲まれ「話聞かせろ」だの「バンド活動はいつやってる」だの色々と質問攻めにあった。
放課後、音楽準備室。
「俺達、有名人になっちゃった?」
響は少し調子に乗っていた。
「俺もクリスマスライブの後のトゥイッター見てたけど、そっちではいつも通りの感じだったから気付かなかった。インスタのインフルエンサー発だったんだな」
「インスタ垢も作る?」
「インスタかあ……。あれは一部の意識高い系がやるもんだと思ってるから、俺みたいなのがやってもなあ……」
「でも情報発信の場は増える訳じゃないですか。作って損はないと思いますよ」
「はいはい、どうせ俺が運営すればいいんでしょ。お前らSNS向いてないから」
そうだ、トゥイッターやYouTubeの運営も俺が全てやっている。
「お願い」
「はあああ、作るかあ、インスタ垢」
「インスタ映えする写真を撮らねえとなあ!」
「そんなん俺に撮れるんか? 俺、素人だぜ? トゥイッタランドに帰りたい」
「#とか付けるといいと思う」
「それくらいは俺も知ってるわ。何か文章みたいにするんでしょ」
「早速、撮影会してみようぜ!」
「じゃあ練習風景でも撮るか?」
「ちょうど夕日が良い感じですよ」
パシャリ。
「#ことりノート #練習中 #インスタ始めました #ライブも来てね、こんなもんか?」
「良いと思う」
奏音ちゃんからお墨付きももらえたところで投稿。
バズリ効果なのか分からないが、一分もしないうちに「いいね」が付いた。
「そういえば、空色がインスタやってた」
「じゃあフォローしようぜ。あいつらがどんな感じに投稿してるのか見てみたい」
俺は「空色」のアカウントを見つけフォローし、その投稿内容をチェックした。
「何か、おしゃれな昼飯の写真とか投稿してるんだけど」
「では、うちも対抗して」
「無理だよ! 俺らのこってり二郎系ラーメンじゃ、いいねなんてもらえない!」
「姉さんを前面に出していきましょう!」
「ああ、そっち」
「姉さんの美しさなら万バズも夢じゃないです!」
「私、写真は苦手だから」
「大丈夫です。姉さんなら手だけでもイケます!」
そうはどうだろうか。
何やかんやで、まめな俺はインスタもぼちぼち更新している。
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