モテ期

ライブ当日。

去年と同じで飲食自由で、テーブルの上にはチキンやらが置いてあった。

 俺達は4番目なので、1番目2番目のバンドの時は観客席にいた。俺もライブの雰囲気に馴れてきたので、今年は皆と一緒に普通にチキンを食っていた。

 今回も大野氏が来てくれて、軽く挨拶をする。

そこへガールズバンド空色のボーカル・成瀬が合流する。

「おう、お疲れ」

「うん」

「桃ちゃん、お久」

「久しぶり~。奏音ちゃん、今日も可愛い~」

 成瀬桃は奏音ちゃんに抱き着く。

「これはリアル百合でござる~」

 大野氏の目がキラキラと光る。

「あのさ、ライブ終わったら、小鳥遊に話あるんだけど」

「へ? 俺に? いいけど」

「じゃ、お互い良い演奏を」

「おう。頑張ろうぜ」



「「「「ことりノート、ファイヤー!」」」」


「ことりノートです! メリークリスマス! 今回はクリスマスにぴったりの新曲から行きます!」


1曲目 「もみの木ランデブー」

    クリスマスの日、もみの木の前で告白するカップルの歌。


2曲目 「ジェリーフィッシュ」

    不思議な曲調で一気に雰囲気を変える。

     

「次は盛り上げ曲だ! タオル振ってこうぜ!」


3曲目 「メッセンジャー」

     リズミカルな郵便配達員の曲。


4曲目 「ディスカバリー」

    いつもの曲で締めだ。


「以上、ことりノートでした! ありがとうございました!」



「小鳥遊、ちょっと」

「ああ、うん」

 響が成瀬にライブハウスの裏手に連れられて行った。

 俺も空色のメンバーも気になったので、バレないように、こっそり付いて行く。


「小鳥遊、私と付き合わない?」

「は?」

成瀬からの告白だった。

 空色のメンバーは、成瀬が響を好きなことを知っており応援していた。

「頑張れ、桃!」

 正直、何で成瀬が響を好きになったのかは分からない。

「な、成瀬、何で俺を⁉」

「あんたの歌声に惚れたのよ、悪い?」

「いや、悪くはないんだけど」

「で、どうするの? 付き合ってくれるの?」

「い、いや、俺は成瀬のこと……」

 これは青山さんと同じで振るルートだ。なるべく成瀬を傷つけないようにしてくれ。

「別に、好きじゃないなら、そう言ってくれて構わないから」

「え、えっと……、成瀬のことは同じライブハウスを盛り上げる仲間としてしか……」

「うん、分かってた」

 成瀬は笑いながら、そう言った。

 空色のメンバーが成瀬に駆け寄って慰めていた。

 ぽいっと弾かれた響が俺に気付く。

「あっ。篤志! また覗き見かよ!」

「すまん、っていうか、成瀬まで振るのかよ」

「でも、俺は今、彼女作る気とかないし」

「何なんだ、お前。ついにモテ期到来かあ?」

「モテてても困る」

「何だそれ、俺も言ってみたい台詞だぜ」


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