クリスマスライブ2

告白

「今年もクリスマスライブ参加するか?」

「もち!」

「参加したい」

「姉さんがそう言うなら僕も」

「クリスマスの予定が空いてるのがいいのか悪いのか」

「ん? どういうことだ」

「誰も彼女とか作らないなってことだよ」

「姉さんに彼氏なんて僕は許しませんよ」

「そりゃ奏音ちゃんの自由だろ」

「大丈夫、今の所は彼氏作る予定ない」

「篤志は彼女欲しいのか?」

「そりゃ欲しいよ」

「世俗的ですね、梅村さん」

「詩音はともかく、響も彼女欲しいだろ?」

「う~ん、どうだろう。考えたこともなかった」

「え~、健全な男子高校生なら彼女欲しいとか考えるだろ、普通」

「俺はさ、今は音楽で手一杯! そろそろクリスマスライブの曲、考えようぜ」

「そうですね」

「去年、何やったっけなあ」

「アップルビーストとブラッディ・クリスマスのヤンデレ2曲とマジシャン・ブランデーと、いつものディスカバリーだぞ」

 俺はライブのセットリストをスマホのメモ帳に記録している。

「さんきゅ、篤志」

「二年連続ヤンデレクリスマスはなあ……」

「明るいクリスマス曲作る」

「ああ、頼むぜ、奏音ちゃん」



冬休み前、最後の登校日。

「小鳥遊君! ちょっといい?」

 放課後、いつも通りバンドの練習に行こうとすると、響が同じクラスの青山さんに呼び止められた。

「じゃあ、俺先に行ってるから」

「おう」

 そうは言ったものの気になったので、こっそり後を追うことにした。


「私、小鳥遊君のことが好きです! 付き合って下さい!」

響が告白されていた。

「ええっと……」

 何を迷っているんだ、響! 相手はクラス一の美少女・青山さんだぞ。

「俺は今、音楽が一番なんだ。だから、ごめん!」

「はああああ⁉ 何断ってんだよ! 勿体ない!」

 思わず前に出て来てしまった。

「あ、篤志⁉」

「あ、ごめん。続けて」

「つ、続けてって」

「まさか青山さんを振る訳ねえよなあ?」

「でも、俺は今、本当に音楽に集中したくて……! 青山さんとは、これからも良いクラスメイトでいたいと思ってる」

「お前、マジかよ……」

「だから青山さん、ごめん! 俺は君とは付き合えない!」

「う、うん、分かった……」

 青山さんはショックを受けたように、その場から去って行った。

「お前さあ……」

「何で俺が悪いみたいになってるんだ? 好きでもないのに付き合う方がダメだろ」

「それはそうだけど」

「じゃあ、切り替えて練習行くか!」

「何でお前すぐ切り替えられるんだよ。俺、お前が告られてるの見て大ショックだわ」

「何でだよ、篤志。告られたこと祝ってくれよ」

「嫌だね」

「え~、ひでえ」


 音楽準備室。

「それで、響が告られてたんだよ」

 俺は早速、櫻井姉弟に響が告られたことをチクっていた。

「バンドのボーカルってモテますからね。良かったじゃないですか」

「でも、こいつ音楽に集中したいって言って断わったんだぜ?」

「バンドにとっては、その方がいいですけどね」

「色恋に、うつつを抜かす、ダメ絶対」

「姉さん、素晴らしい川柳ですね」

「じゃあ、俺の話はそれくらいにして練習始めるぞ」



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