ファン

ライブ当日。

17時からのライブの前に16時から物販は始まる。

ライブハウスのスタッフさんが売り子をしてくれているが、売れているかどうか気になって直前練習に身が入らない。控え室と物販をウロウロしていた。

俺達のグッズを買ってくれた人を見ると、ニヨニヨしてしまう。

「俺達のファン、いたんだな」

「ああ」

 Tシャツ売り切れの文字を見て、俺はしみじみと思った。

 こんなにファンがいたんだ、と。

 嬉しい。

 そのファン達、皆にハグして回りたいくらいだ。

 

 ライブが始まった。

 先にステージに立つのは空色だ。

青春全てを注ぎ込んだみたいな歌詞が刺さる。

 パワフルにステージを走り回りながら歌う成瀬。

 疲れてるはずなのに、笑顔でステージを終える。


 空色目当てのお客さんは空色の出番が終わると帰ってしまう人もいる。

 そんな人達を後悔させるような、残ってくれた人を、こっちのファンに引きずり込むような演奏をしてやる。


「「「「ことりノート、ファイヤー」」」」


1曲目「チアフルフラワー」

    空色の青春ソングにだって負けてない。聴いてる人を応援する曲だ。


2曲目「ダンデライオン・クライシス」

    新曲。たんぽぽの妖精の冒険の歌だ。ファンタジックに。


3曲目「ジェリーフィッシュ」

    深海をテーマにした、少し不思議なメロディの曲。


4曲目「マジシャン・ブランデー」

    これもファンタジーな曲。今回のテーマは青春ファンタジーだ。


5曲目「走れ! アラシ!」

    新曲。「走れメロス」からインスピレーションを受けて作った曲。友との約束のためにアラシは走る。


6曲目「ディスカバリー」

   俺達の定番曲で締め。


「今日はツーマンありがとうね」

 成瀬達が挨拶に来る。

「こちらこそ」

「てな訳で、奏音ちゃん、今度、女子会しようね~」

「うん」

「僕も付いて行きますよ」

「男は邪魔」

「付いて来たら蹴っ飛ばす」

「姉さんになら蹴られても本望です」

「お前、頭大丈夫か」


「おーい、物販CDも完売したって!」

「マジか! サイン付けたのが良かったな」


 俺達にはファンが付いている。

 それが実感出来ただけでも最高だった。



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