ツーマンライブ

グッズ作り

 夏フェスが終わって、夏休みも終わった頃。

 俺達はライブハウス・スターダストへ次のライブの申し込みをしに向かった。

「そろそろ曲数も多いツーマンライブとかやってみない?」

「ツーマンライブ?」

「そう。ことりノートと一緒にやりたいってバンドがいてね」

「それってアタシ達のこと?」

「お、空色じゃん」

「空色」とは、スターダストのライブでも時々、共演しているバンドだ。

 ガールズバンドで、ボーカルの成瀬の実力が高い。

「ね、奏音ちゃん、いいよね?」

「私はいいけど」

 成瀬は奏音ちゃんとも仲が良い。

「俺もいいぜ! やってやろうじゃないか、ツーマン!」

 という訳で、俺達の次の目標はツーマンライブに決まった。



「グッズを作りたい」

 ある日の練習後、奏音ちゃんがそう言った。

「グッズかあ……」

「空色はグッズも充実してる」

 確かに、前のライブの時も何か売ってたなとは思っていた。

「作っても売れるかなあ」

「作ってみないと分からないけど、これからのことも考えて作るべき! デザインは私が考える」

 いつになく強気な奏音ちゃんに推され、グッズも作ることになってしまった。


 次の日。

「Tシャツのデザイン、考えてきた」

「さすがです、姉さん」

「お、早速だな。どれどれ……」

俺達のバンドロゴが描かれたシンプルなものだった。ことりノートの文字に、小鳥が止まっていて、桜と梅が付いているものだ。

「Tシャツは王道ですね」

「後はタオルとか」

「CDはどうだ?」

「CDは今の時代、売れにくいらしいぞ。俺達はyoutubeにも楽曲をアップしてるし、そっちで聴けばいいやって人が多くてな」

「でもCDやっぱ作りたいよな」

「じゃあ必要最低限の枚数だな。サイン付とかにするか」

「そういえば、皆さん、サインとか考えてるんですか?」

「まあな」

「俺も一応」

「私も」

「では、僕は姉さんと似た感じの字体のサインにしますね」

 グッズは、デザインはこちらで考えて、印刷や増産は業者に頼んだ。


 グッズが納品された。結局、Tシャツとタオルと缶バッジ、CDの4つになった。

「俺達のファンって何人いるんだろうな」

「グッズを買ってくれるかどうかで分かるな」

「せっかく作ったのに売れなかったらどうしよう……」

「大丈夫、売れるって、多分……」

 正直、俺も自分達のファンが何人いるかとか把握できていなかった。ライブを見に来てくれる人の顔は何となく覚えているが、それがことりノート目当てなのか、別バンド推しなのかは定かではない。売れなかったら、当日のテンションにも響くな。


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