キーボード担当は?

「バンドの話、考えてやってもいい」

「ほんとかっ⁉」

「ただし、俺に音楽の才能はないからな。期待はするなよ」

「才能なんていらねえよ。一緒にやってくれるだけで嬉しい」

 小鳥遊がすごくいい笑顔で言う。

「で、篤志は何やるんだ? やっぱりベース?」

「ああ、そりゃあそうだろ。俺の好きなキャラがベースだからな」

「ありがとな! ベース欲しかったんだ!」

「で、他のメンバーはどうすんだ? お前がギターボーカル、俺がベース。最低でもあと、キーボードとドラムはいるだろ」

「あ~、うん。一応、当てはあるんだよな」

「え、いつの間に……」

 放課後、練習場所として適当な空き教室を探しながら校内を歩いていく。

「ほら、聞こえてきた」

「何が……って、ああ、ピアノの音か」

「すげー上手いだろ?」

「って、言われても俺にはピアノの上手い下手とか分かんねえし。そいつはピアノの先生になれるレベルで上手いの?」

「あー、先生か。うーん、どうだろうな……」

「じゃあピアニストとか。アーティスト方面なら行けそうな」

「まあどっちかっていえば……、とりあえず篤志も会ってみようぜ」

 ピアノの音が近付いており、歩いているうちに音楽室に辿り着いた。

「よし、入るぞ」

 演奏が一区切り付いた所で「おじゃましま~す」と響が音楽室の扉を開ける。

「奏音ちゃん、お疲れ様。今日も良い演奏だったね!」

「気安く姉さんを呼ぶなって言いましたよね!」

 拍手をしながらグランドピアノに近付く響の前に、物凄い剣幕の少年が立ち塞がった。

「ごめん、ごめん」

「誰?」

「それは、こちらの台詞ですか? あなたこそ誰ですか?」

「ああ、ごめん。梅村篤志です」

「そうですか」

 そう言うと、慇懃無礼な彼は、くるっと向きを変えた。

「さあ、姉さん、こいつらに構わず続きを」

「いや、お前ら誰だよ⁉」

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