第2話 死 ~デスゲーム~
何事も、遡って『あれが全ての始まりだった』と始点だったのかを定めるのは難しい。因果は連続するもので、あるきっかけにも結局、そのきっかけが存在したりするからだ。だが始点ではなく前提という曖昧な形でなら言及は可能である。だから、こういう言い方になる──『ネオ・ラグナロク』は、全ての前提だった。
『ネオ・ラグナロク』は
ジャンル、展開、設定、どれをとっても、決して無個性ではないにしろ、異色と言う程の際立った目新しさはなく、デスゲームモノ、或いは能力バトルモノの素人作品──世間の評価としてはそんなところだろう。というより、世間から何かしら評価されるような立ち位置にない。
革命的な名作とは言えなかったが、かといって駄作でもなかった。凡作或いは良作と評される類の作品だった。それでも更新があればサイトのランキングには浮上し、一部界隈ではそれなりに盛り上がりを見せていた。だが、その小規模な隆盛も既に途切れている。
ありがちな話だ、徐々に投稿が滞り気味になり、大団円を迎えることなく続きが投稿されなくなってしまった。失踪だとかエタるとか、そんな言葉で表現される、金銭の発生しないモチベーションだけの創作活動では、これまたよくある類の現象だった。やがて公開自体が作者の手で停止されると、その小説はインターネットの海から姿を消した。
──『ネオ・ラグナロク』は死んだのだ。
あとに残されたのはその残滓だけであり、それは海砂に紛れた貝の破片の様に、砕かれ、紛れ、薄れ、やがて人々の記憶からも消えていった。──だが。
「『ネオ・ラグナロク』の世界は
ある夜、胡乱なフクロウが各地に現れ、そう告げた。自室で自習をしていると、橋の下で膝を抱えていると、喧嘩を終え河原で立ち尽くしていると……とにかく高校生の彼等が各々一人で居たところに、それは突如目の前に現れ、突然そんな頓狂なことを言ったのだ。
もっとも、現れたと言っても正体は立体映像、いわゆるホログラムだった。フクロウはデフォルメを効かせた所謂ゆるキャラのような造形をしており、『ネオ・ラグナロク』に登場するキャラクター『クソラグくん』を名乗った。どうやら映像と音声は予め撮られたものらしく、高校生達の反応、疑問や驚きの声を一切無視し、一方的に喋り続けた。『ネオ・ラグナロク』について、そういった作品が存在することに始まり、ジャンルや世界観、あらすじを語った後、一方的に告げる。
「そして、君は幸運にも、『ネオ・ラグナロク』で闘う能力者に選ばれたロク!」
クソラグくんは、戦いを望む者に『能力』を与え、戦う機会を設けると言った。元がデスゲームというだけで実際に死者が出ることは無い。そして、勝者には原作通りに願いを叶える権利が与えられる。
映像は、続けてある駅名と日時を告げると、幻のように消え去った。そんな通達が、その夜、百人の高校生に対して行われたのである。
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