ルーン3話 宴の影
「3週間よく頑張ったわね。あなたたちの実力はよくわかったわ。あなたたちとなら私も安心して作戦を決行できそうね」
ルーンは最初のミーティングから今日まで作戦に参加する4人が仲間として頼れる存在かを確かめるために、ハティに届いている依頼の中で特に戦闘を求められる依頼を5個ずつこなさせていた。
「まあ一個残念なのが、イアル君ね。まさか不意を突かれて首を撃たれちゃうなんて。まあ、あとの3人は無事に戻って来てくれて嬉しいわ」
ルーンは気分が良さそうに鼻歌を歌い出した。3人は満足気のルーンをみてホッとしている様子だ。
するとルーンはハッと何かを思い出して3人の方を向いた。
「発表があるんだったわ!」
「ルーン様の発表!2人とも静粛に!」
「おいおい、お前…、信仰心が高まってないか?」
マーニはコクコクと頷いて、なぜかビールを一気に飲み干した。それをルーンと残りの2人は不思議そうに見ていた。
「私たちがぶち壊す結婚式が決まったわ。来週の土曜日、フェンリル・ド・ラグナロクってとこよ。19時から始まるみたいよ」
カウンター席でまったりとコーヒーを
「マスター、明日までに4人分のマスクを用意しといてくれる?あと、赤い薔薇のコサージュと、白いシュシュをひとつ。お願いね」
「なるほどな。ルーン、お前は幸せの結婚式をあんたら4人だけの混沌…、
「フフ。どうかしらね」
ルーンは不敵に笑い、はぐらかすように赤いワインをグイッと飲んだ。
「さて、もう時間も時間ね。今日は解散よ。気をつけて帰りなさい。あ、ヴィーザルはこの後ちょっと残ってちょうだい」
「わかった」
緊張が垣間見えるヴィーザルをよそに、ソールは羨ましがっていた。
「えーいいなぁ。ルーン様と2人なんて〜、ヴィーザルあんた、ルーン様に手出さないでよ。ルーン様はいつか私のものにするんだから」
「ソール、安心してちょうだい、そういう話じゃないわ。それに何かして来たってこの男が返り討ちに遭うだけだもの」
「さすがです!そうですよね、こんな男はルーン様にとってはただの虫ケラです!」
「おい、お前ら…、目の前にいる相手をよくそんな風に言えるな」
ヴィーザル以外の者は和やかに笑っているが、ヴィーザルだけが硬い表情のままだった。
そしてマーニとソールがハティを後にした。5分程だろうか。沈黙が続いた。ルーンは静かに赤ワインを飲んでいる目の前でヴィーザルは口を固く閉ざして微動だにしない。
赤ワインとおつまみのチーズが無くなった。ルーンは静かに口を開いた。
「明日、1時間前に来なさい」
それだけ言ってルーンは扉を開けて出て行った。
コーヒーを飲んでいたマスターは、去って行くルーンを眉を上げてみていた。対してヴィーザルからは脂汗が噴き出ていた。
次の日の0時、ハティの裏でルーンとヴィーザルが立って話をしていた。
「実はね、あなたたちの任務、私もみんなの様子を裏で1人ずつみてたのよ。なんでかって?あなたたちの戦い方を観察したり、不正じゃないかどうかを見るためよ」
「そうなんですか。で、あんたから見て俺はどうだったんだ」
ルーンは腕を組んだ。
「あなたの戦い方はまさに熟練ね。典型的な拳銃とダガー。あなたほど優秀な
「そうか。あんたにそこまで言われるなんてな。光栄だぜ」
「ただ」
空気がピリッとしたことをヴィーザルは感じ取った。でももう遅い。
「ヴィーザル、あなたの3つ目の依頼で殺しきれなかったやつと真っ向から対峙することになったでしょ。相手はナイフを持ってつっ込んできた時のあなたのステップと対応…。あなたはどうやら私達の作戦を壊そうとしているのね」
「なんのことだ」
「とぼけなくていいの。あなた、警察でしょ。あの動きは柔道、空手、剣道…。それら全てを統合した動きに見えたわ。それに、拳銃の使い方も模範的。どう?合ってるかしら」
ヴィーザルは深い深いため息を吐いた。そして低い声でゆっくりと言った。
「警察ではねえよ。俺はもう警察は辞めている。政府の犬なんかでは守れない。そして壊せないものがある。それのために俺はこの裏社会を壊す組織に入った。俺はその捜査員だ」
「正義の為に裏社会での上位に立ったわけね。その為に悪になるなんて…、イカれてるわね」
「ハハ、そうだろう」
ヴィーザルは今まで見せたことのないような朗らかな顔で笑ってみせた。
「哀れね」
ザク……。
ヴィーザルと呼ばれた男の首から鮮紅色の液体が噴き出て、ルーンはそれを身体いっぱいに浴びた。彼女はそのまま男の体を放っておいてハティへ入った。
「マスター、お願い」
マスターは店の外へ出た。
「残念だけど、あなたの夢は叶っちゃうわね。ヴィーザル」
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