ルーン2話 極楽

 今日もまた同じだった。ザコを斬って、報酬を貰う。私って今どのくらい貯金しているのかしら。ザコを斬るだけで20万とか30万貰えるから…多分200はあるわよね。今回の依頼は報酬がたんまりで60万も貰えちゃったわ。バカね、あんなザコ集団のためにお金を払うなんて。まあ、今日は無駄に相手が多かったから剣のメンテナンスを頼んどこうかしら。

「マスター、剣のメンテお願い」

「わかった」

 それにしても稼いだわねぇ…。

 そろそろいいかしらね。

「ねえマスター、ちょっと求人を頼めるかしら?」

 君の悪く、また妖艶な微笑みにマスターはゾッとした様子だった。蛇に睨まれる蛙の如く、彼は頷くことしかできなかった。


 1週間経った日の午前1時、ハティにはルーンと3人の男と1人の女が卓合わせに座っていた。

 ルーンは脚を組んで4人をじっくりとみている。それに対して4人は瞬きもできぬほどの緊張感を持ってジッとしていた。

 ルーンは十分4人を観察して脚を組み直して口を開いた。

「あなた達が今回私の作戦に協力してくれるのね。で結構、名前を教えてちょうだい」

 圧は変わらないものの、先ほどまでの鎖のような緊張感が薄れ始めて4人は順番に自身の裏社会の経歴と名前をルーンに紹介した。

「マーニ、ソール、イアル、ヴィーザル…ね。よろしく。1週間前に求人を出して、集まった中で裏社会でのポイント上位4位の者を参加者とする。だったわね。マスターのことだからあなたたちが弱いなんてことはないわね。それにしてもソール、あなたまだ若い女の子なのにすごいじゃない。歳をきいてもいいかしら」

 ツヤツヤとしたポニーテールの女、ソールは口元が弛み、興奮気味に声をだした。

「22です!」

「あら、若いわね。何があってこっちに脚を踏み入れたかは知らないけど、この世界で戦果をあげれるなんてすごいわね。」

「わわ!ルーン様にそんなことを言われるなんbて光栄です!私裏社会に手を染めてから貴方を知って、ずっと憧れてました!貴方のためなら命を投げ捨ててでも、どんな者でも殺すと誓います!!」

「頼もしいわね」

 ルーンが微笑んで見せるとソールの表情はパアッと明るくなった。そのムード身体の大きな30代くらいのヴィーゼルという男が割り込んできた。

「そろそろ本題に入ってくれ。あんたみたいな強いやつが、俺らのように強いやつをやつを集めてまでしたいことってなんなんだ?」

「あ、それ僕も興味あります」

 一見非力そうなメガネをかけたイアルが便乗した。一方で長くてボサボサとした髪の毛が不潔に見えるマーニはコクコクと頷いてキラキラした目でルーンに無言で訴えかけていた。

「そうね。勿体ぶってはいけないわね」

 シャンパングラスを手に取ってルーンが一気に中身を飲み干した。それと同時に4人は固唾をのんだ

「この5人で結婚式をぶち壊すのよ」

「え?」

 場の空気が滑った。先ほどまで冷たい糸が張りめぐされていた様な空気に急な暖気が侵入してきた。聞き耳をたてていたマスターでさえも危うく手に持ったグラスを落としそうになった。

「あ、あのルーンさん」

「どうしたの?ソール」

「それってこの5人でやるべきことなのでしょうか?なんていうか、お言葉ですが、やってることと人材が会っていない気が…」

 恐る恐る言ったソールに他も同調して「そうだ」といった。それに対しルーンは表情一つ変えずに返した。

「当たり前よ。だってこれはまだ作戦の序盤だもの」

「ということはあんたはこの後も俺らともっと大きな作戦を実行していくってわけか?」

「もちろん」

 それを聞き4人は安堵した様子をみせた。

「私の理想はね、この世界を一度作り直させるのよ」

「ほう…。作り直させる?貴方がじゃなくて」

「ええそうよ。だって私、統治となめんどくさいことしたくないもの」

 4人はルーンの野望について静かに聞きはじめた。

「私は一度この世界のあらゆる幸せを潰してみたいの。幸せが集う場所で混沌の渦をかき起こしてみればこの世界はいずれ秩序を無くしていく。私はそうなった後が見たいの、この世界の人々はそこからどうするのかが」

 スケールの大きな悪謀にただ4人は唖然としている。

「私は考えたわ。幸せが大きな場所ってどこかしらって。で、その答えの終点が結婚式なのよ。あそこは純白、笑顔、祝福なんていう吐き気のするものが勢揃いでしょ?そこを血祭りにあげてしまえば、なんか…面白いでしょ?」

 最後の狂った一言に4人は背筋を凍らせた。カウンターに座っていたマスターは怪物モンスターとボソッと言葉を漏らした。それを一切気にしずルーンは話した。

「どう?協力してくれる?」

 4人はもう解っていた。ここで断ったら命はないということを。彼女から放たれ、自身の身体に巻き付いているような気迫が色濃く教えてくれているから。4人は観念し、協力すると話を飲んだ。

 手駒を手に入れた悪魔のような彼女は酒をぐいっと飲み一万円札をテーブルに置いて出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る