ルーン1話 つまらないわ

ザシュ、、、ぐあぁぁぁ、、、

「あーらあら、もうギブアップなのね。血の量も少ないし…、つまらなすぎるわ」

 今日の依頼は最近オラついてたっていうこのろくでもない組合員13名を殺す事だったんだけど…、所詮不良がろくに勉強もせずに結成した不法組合よね。ほとんどが抵抗もできずに死んでいった。やりがいがないわね。まあとりあえず終わった事だし報酬を貰いに行かないと。

 赤くドロドロとした液体が飛び散り垂れている館から、床でグタりと息もなく倒れている男達の首を斬った赤いドレスを着た女は去って行った。


 午前2時。どの店も灯りが消えているなか、その路地裏でボンヤリと薄くOPENとネオンが光る店があった。「ハティ」というバーだ。開店開始時間も他のバーより遅めで場所も場所で知名度も絶望的である。

 それもそうだ、このような条件でないといけないのだ。このハティというバーは殺し屋や詐欺師といった、いわゆる裏社会で生きる者達が集まって依頼を引き受けたり酒を嗜んだりする場所なのだ。つまりハティはこの地域一帯の「闇のギルド」とでも言うべきだろう。

 殺気漂う店内は普通のバーと変わりなくモダンな雰囲気を醸している。カウンター席には長髪の男とツインテールの女が二人で隣り合わせで座りテキーラを顔を真っ赤にして呑んでいた。しかし急に2人のレモンの香りがほんのりチラついていた空気は血の匂いの狂気に殺され変えられてしまった。匂いのもとの赤いドレスを着た女をみたツインテールの女はボソボソとした声で男に言った。

「ちょ、ルーンだよ。やばい、怖すぎ。コイツもハティに来てたの⁉︎」

「俺も知らなかったよ!あの赤いドレスに青と赤のバラが飾られている赤い剣…、間違えなくルーンだよ。か、帰るか?」

「え、ええそうね。詐欺師の私達如きが目をつけられたらもうどうしようもないもの。それに彼女、ついさっき誰かを殺したのよ。ひどい匂い」

 そそくさとルーンと呼ばれる彼女を避けるように店を出ていった2人に、ドアが閉まり切った後、女は鼻で笑った。

「ほんとくだらないわね。どうして私があんな奴らに目をつけらないといけないのよ。目をつけられるかもしれないっていう考え自体が傲慢だったわ。まあいいや。マスター、依頼こなしてきたから報酬ちょうだい?」

 ルーンはカウンター席にズシンと押し込みように座り、スキンヘッドのマスターの報酬を催促し始めた。マスターはゆっくりとシェイカーを振ってシェイクを作っていた。

「まあまあ早まるなって。今渡す」

 マスターはシェイカーからグラスに酒を注いでルーンへ封筒と共に渡した。ルーンは両方手に取り、甘味の強い酒を飲みながら封筒の中身を数えだした。

「凄いわね、あんな雑魚を13人斬るだけでこんなたくさん金が貰えるなんて」

 厚みのある茶封筒の中に入っている札束をじっと眺めてルーンは深い溜息を吐いた。

「ほんとにつまらない。刺激が欲しいのよね。もっと強い相手、ううん、そんなのじゃない」

「ルーン、あんたはよく意味のわからない事を言う。こっちの世界にフラッと入ってきたと思ったらあっという間にここら一帯の悪人には知らない者がいない殺し屋になった。あんたの目的はなんなんだい?」

「ちょっとマスター、つまんないわよそれ。興醒めするような事聞かないでくれる?同じやつもう一杯」

 口調は変わらないはずのルーンの言葉は何故だかビリビリと聞こえてマスターの服には冷や汗が滲み出した。マスターは何も言わずに酒を作ろうとした。しかしふと時計が目に入り針が午前4時を指していることに気がついた。

「ルーン、4時だがまだ帰らなくていいのか?」

 するとルーンはあっと驚いたような顔を見せた。

「あらほんとだ!急がないと」

 するとすぐにルーンは赤いドレスを脱ぎ、服を着替えて、手で整えていた髪の毛をくしゃくしゃにしてハティから去って行った。

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