11月(2)

「これ、何か知ってる?」


 一階でテレビを見ていたばあちゃんに本棚で見つけたノートを渡した。受け取ったノートを見ているばあちゃんの表情に変化はないように見える。


「多分、以前の亮が書いた日記だろう」


 ノートを返された。


「記憶喪失って書いてあったから、そうかなとは思った。でも、どうしてそんなに古いノートに書かれてたんだ?」

「…昔、ばあちゃんが買ったけど使わないでいたやつじゃないかな」

「昔って…いつの話?」

「覚えてないよ」


 ばあちゃんの答えには納得できない。


「その日記は何度も、何度も見たよ。見た上で聞くよ?…俺はいつからここにいるの?いつからこうなってる?」

「………」

「俺の親はどこにいる?じいちゃんは?」

「…もういない」

「ばあちゃんの……、ばあちゃんの名前は?」

「………」

「……教えてくれ…」

「……美穂だ」


 答えてくれなくても、名前に関してはそうだろうと思ってた。何かで見た気がする。でも、答えるのに躊躇するようなことはないはずだ。…ばあちゃんが言った通りに以前の俺がこの日記を書いたとしたら……いったいいつからこうなっているんだ?それにばあちゃんは、ばあちゃんじゃないのか?……いや、そんなわけはないだろう。


「…ごめん。ちょっと具合悪くなってきたから、後にしてくれるか」

「…は?……いや、わかった」


 もっと追求したかった。でも、自分も今の状況をすぐには消化できなさそうだ。…一体どうなってるんだ?

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