第13話 エルフの国②

「挨拶が遅くなりましたな。この里で長をしておるコモリと申す。クロノス王よ、世界樹をよくぞ再現してくれました。エルフ族を代表して感謝します。産まれ落ちる前に世界樹は枯れたと言われ、先祖からの代々引き継がれてきた役目もなく、只々生き延びているエルフの一人ですが、クロノス王のおかげでこの世界に産まれてきた役目がやっと出来ました。エルフ族を代表して王には感謝致します。」


「うむ。」


「古き友よ。閣下は、我々には計り知れない心の大きい御方だ。役割があるならば閣下は、それを認めてくださる。世界樹の管理は友よ、其方がしたいのか?」


「我一族、、、いや、エルフ族は世界樹から産まれ、世界樹を守るために存在する一族だ。世界中のエルフに取って母なる樹が復活することは神がこの世に降り立つことと同意義。許されるならば近くで暮らさせて頂ける許可を。是非とも。」


「閣下、如何なさいますか?我の古き友の頼みを聞き入れて貰えませぬか?」


「うむ、わかった。」


「古き友よ、閣下の許可は頂いた。」


「賢き友人よ、感謝する。閣下、ありがたき幸せ、ハイ・エルフ族を代表して多大なる感謝を。」


「鑑定できる者を呼んで世界樹の葉の確認をすると良い。実在する我が国の世界樹の確認にも旅立たせる必要があるであろう。」


「そうだな。私が見た限りでは、この魂に震える生命力は世界樹の葉であることは間違いないと思うが魔力が見えぬ若いエルフの者には確証も欲しいだろうしな。閣下、失礼ですが鑑定をさせていただきます。」


「うむ、問題ない。」


「鑑定師と錬金術師、薬草術に秀でた者をここへ。口外は厳禁と伝えよ」


複数のエルフ達が部屋へと早急に集められる。

皆、世界樹の葉を前に拝み、平伏し、涙まで流す者もいる。


「クロノス閣下。ここにいるエルフ達は、里を代表する技能を持つ者達です。彼らもこの葉が本物だとすぐに判断が出来たというのが世界樹の葉が本物である証拠でございます。あぁ、、、本当に世界樹がこの世界に再び、、、」


「古き友よ、あとで許可証を渡すゆえ王国へ世界樹を見に行くと良い。くれぐれも国民に威圧的な態度は取らぬようにな。我らは次なる国を目指すゆえに。」


「なんと!!気の早いことを!!クロノス閣下のための宴をせねばならぬ!!このまま素通りでお通ししてはエルフの名が廃る!!是非、是非に!!」


「閣下、如何なさいますか?」


「うむ、任せる。」


「ありがたき幸せ。皆の者よ、我らエルフ族の悲願が叶った。エルフ族の名にかけて偉大なるクロノス閣下のための宴の準備を急ぐのだ!」


———————————————————————


「次は何処の国へ向かわれるのですか?」


「ドワーフの国へ向かう予定だ。クロノス王国には技術力が足りない。閣下の魔力を用い城壁は築いたが死の森の脅威から国民を守るためには専門の職人の力が必要。武器もいる、生活用品もこれからは必要になっていく。人族の国から雇い入れるのも良いが、腕の良いドワーフ族の方がよかろう?」


「ドワーフか・・・」


「エルフとは昔から仲が悪いのだったな。」


「主義主張が違うからな。」


「閣下の元では一つにまとまると我は思う。」


「ドワーフ族は金では動かぬぞ?どうするつもりだ?」


「手土産は用意してある。昔から変わるまい、酒が嫌いなドワーフは存在せぬと。世界樹の実で作った酒だ。古き友人よ、一本進呈しよう。酒精の強さと世界樹の生命力とも呼べる魔力が混ざり合った至高の酒だ。リッチとなった我でも味が感じられる・・・まさに奇跡の酒だ。」


「なんと贅沢な・・・それをドワーフにか!?」


「持ってきた酒は原酒だ。普段飲むなら薄めて飲めば良かろう。他の植物と混ぜ合わせるのも一興だな。酒好きのドワーフには堪らないであろう。クロノス王国でしか飲めぬ酒だ。」


「たしかに鍛治と酒を愛するドワーフには魅力的だな。しかし、我らエルフがいるとなると話が変わると思うが?」


「世界樹を管理をするのがお主らエルフ族であろう?酒を作るのはドワーフ族だ。それぞれに役割がある、互いがおらぬと美味い酒は完成せぬぞ? 酒以外にも死の森の魔物の素材もある。そんな危険で暴力的、かつ魅力的な地はあるまい。」


「たしかにな。粗野な荒くれのドワーフ族にはピッタリとも言える場所だな。」

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