第9話 米百俵の精神
帰宅後の執務室
「クワン、民の中で読み書きと簡単な計算が出来る者を集めて欲しい。教育をし今後に役立てたい。」
「そう言われると思い、いつでも馳せ参じるよう伝えてあります。明日にでも屋敷に呼び出しましょう。」
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日が昇り朝を迎える。
私はと言うと庭で刀の稽古を始めている。
現実世界とゲーム内、スキルの効果で自身の身体操作の違和感を無くすために基本の足捌き、型稽古、居合・抜刀までを丁寧に行なっていく。慣れるまでは幾分、日数はかかるだろうが新しいことに挑戦できることは楽しみでもある。
「閣下の稽古を見学させて頂くと、剣の道も魔法の道に通じると言うのが否が応でも理解させられますな。」
汗を拭いながらクワンとの会話を楽しむ。
「魔法に関しては私は素人だからな。刀の動作は先人たちによる長年の鍛錬と実践、研究によって生み出されてきたものだから、そう意味では似ているのかもな。」
「我も生前の若い頃には貴族の嗜みとしての剣の修行をさせられましたが、嫌々やっていたところがございました。魔法の研究の方が性に合っていたのもございますが。若かりし頃の当時は剣術の楽しみ方がわからなかった。閣下の朝の動きを見させていただくと、一連の動作に無駄がなく美しさまで感じさせられます。例えとして機能美を追求した魔法陣と似てると言う感じですかな。」
「クワンに褒められると嬉しいものだな。機能美か・・・確かに良くも悪くも合理的に斬る事を追求している流派なのでな。師匠には全ての動作に理があると教えられてきた。今となっては私の生きる為の道標でもあるな」
「”理(ことわり)”でございますか、良い表現方法ですな。原因・起因・結果。魔術師の永遠の課題でございますな。朝から良い事を教えていただきました。そろそろ、読み書きが出来る者たちが屋敷に参りますのでご用意のほどを」
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8人の男女が会議室用に準備した部屋に集められる。
「忙しい中、集まってもらい感謝する。この度、小さいながらも国を興すことになった。国の発展には教育が必要不可欠になる。今はまだ、日々の生活に苦しむ時期だが、これは私が一年以内に解消することを約束する。
私一人の力では国は成り立たない、私一人の力では出来ることには限界がある。
皆には、将来のこの国の為に、今いる子供達の為に、生まれてくる未来の子孫の為に国の手助けをして欲しい。」
私は頭を下げる。
「閣下、頭をお上げください。私達は閣下に命を救われた身です。閣下があの時いらっしゃらなければ我々は魔物に殺されていたか、再び流民の民になるところでした。閣下の手助けが出来るのなら喜んでお手伝いいたします。皆の衆もそれで良いか?」
長老格に当たる1人の老人の声で皆の意見がまとまる。
「まずは皆に感謝を。一年間、朝の1時間、私が皆に色々な知識を教えていく。それを皆は学んで欲しい。来年には皆が少しずつで良い、仲間に学んだ事を伝えていって欲しい。数年後には子供達の学びの場を作れるようにするのが目的だ。将来、学んだ子供たちがこの国を作っていく。最初の8人が君たちだ、未来の子供達の笑顔のために共に学んでいこう。」
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翌日から講義を開始する。
「米百俵」の精神で、一人一人の才能を伸ばし情操を高めるよう8人に教えていくことにる。
いずれ、将来を活躍できる子供達のための学校の建設に向けての第一歩である。
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