第10話 事件は会議室で起こるもの


VAR本社 会議室


「では、Virtual Artificial Intelligence RPG特別会議を始めます。普段ですとオンライン会議ですが、本日は特別に皆様にお集まりいただき誠にありがとうございます。司会は特別広報課課長兼、第2システム開発室所属の加藤が進行いたします。役員の皆様には事前に本日の資料をお配りいたしております。本日の議題は特別先行プレヤーということで黒野様に関しての数日間のデーターを基に作成しております。本日は質問にお答えできるよう、チーム・クロノス専用スタッフも本日は会議に同席しておりますので、よろしくお願いします。」


第2開発チームから新設された特別広報課。

本来は広報部の仕事内容であったが、当初は億アカは怪しいと誰も名乗りを上げずに丸投げされ、仕方なくシステム開発の中でも常識人と言われる加藤が兼務という形で立ち上げた。当初は億アカ専用プレイヤー規定が厳しかったこともあり、なかなか決まらずに批判されていた部署だったが、現在の中身は黒野専用部署とも言え、配信後たった数日で金の匂いが集まる花形の部署となっている。



「加藤課長、資料を見たんだが当初の予想デを遥かに超えた結果は間違いないんだな?不採算と予想されていたのに凄いじゃないか!!黒野様効果は凄いな!!」


第一営業部長も兼任している営業畑のリーダーである越野専務が開口一番、上機嫌で質問を投げかけてくる。


「はい。事前予想の数倍の登録者数、視聴数、問合せ数、事前予約数になってます。特に事前予約数が日毎に右肩上がりです。当初の予定初期ロットではハードが足りなくなるの生産増大を緊急でお願いします。」


「嬉しい悲鳴だな、まさに黒野様効果と言ったところか・・・他にユーザーから、ここの要望一覧なのだが・・・これは本当か??」


「はい、クロノス様関係のグッズの要望が余りにも多いものでして意見の多かった3点をピックアップしました。クロノス閣下、クワン宰相、尊(ミコト)のフィギュア化・人形化希望の意見が・・・最初は目を疑いましたが。」


「まだ配信が始まって数日でこれか・・・ゲーム内キャラは問題ないがクロノス閣下のフィギュアは黒野様の肖像権を使わせてもらうことになる。許可が必要になるな、課長から聞いてみてもらって良いか?」


「わかりました。黒野様のことですから”任せる”で終わりそうですが。次に配信に関してスポンサー希望の依頼が多数問合せが来ております。この件に関しては黒野様と検討してみます。もちろん、黒野様の古巣でもあるクロノス・コーポレーションからも来ております。ここもほぼ、”任せる”になると思われますのでより良い会社を選びます。」


「そこに関しては、特別広報課に任せる。当社と黒野様のイメージに合うクリーンな会社を選んで欲しい。人手が足りないなら第一営業部の若手を何人か出向させるから、いつでも言ってくれ、彼らにも良い経験になる。

しかし、ゲームとは言え閣下効果は凄いものだな。実際のところは黒野様への収益化に関してはどうなっている?このまま行けば、当社だけが恩恵を受けているように感じるユーザーも増えそうだが?」


「それに関しては、黒野様は収益化に関しましては特に格段のこだわりのない方なので収支予定表を見せても財団に寄付で頼むの一言です。数日お付き合いしていますが金銭面にこだわる方ではありませんし、そもそも黒野様自体が資産面でまったく困っておりません。

実際は登録者数は初日にミリオンを超えて日毎に増えており、視聴数もそれに応じて増加しております。推移に関しましては後ほど動画チームからご説明いたします。」



「発言良いかな?」

常務兼、第2営業部部長の天野が質疑の為に手を挙げる。


「推移の経緯の前に、当部署のお客様やスポンサーされてるクライアントの方々がどうしても黒野さんに会いたいと言われてな、黒野さんと会えるように特別広報課にセッティングして欲しいんだが。」


空気を読まず、常務が発言をする。

どうしたものかと越野専務の顔を見ると、苦々しい目線で天野常務を見つめている。この2人は不倶戴天の中であるのは社内でも非常に有名である。


さらにそれに便乗するかのように。


「広報部の白田です。黒野さんへのCM出演の依頼の問合せがこの数日、当部署へ多数来ております。当社の利益にもなるので是非とも、黒野さんに依頼を受けていただくようにと広報部が直接お話ししたいのですが。」


加藤は苛立ちを抑えながら回答する。


「まずは白田部長。黒野様はメディア媒体には興味はありません。一私人としてゲームを楽しむと言う目的がありますので特定の個人や企業の媒体になることはお断りされるかと思います。ゲームの為の協力に関しては契約内容にもありますのでご協力のご依頼はさせていただきますが、CM関係はゲームに関するものでしょうか?」


どうせ、良い顔してきたんだろう?と加藤は内心思いながら回答する。


「天野常務。黒野様にご確認は致しますが確約は出来ませんのでお時間がかかります。基本的には契約内容対象外の事柄に関しましてはお受けなさらない方だと私は思いますので、先方にはそのようにやんわりとお伝えしていただく方がよろしいかと思います。」


ニコニコ越野 VS イライラ天野 & 白田



数日とはいえ、カリスマ黒野と会話をし、その人柄に影響されている加藤率いる特別広報課メンバー。

後で聞いた話だが自分より一回り以上も年下のカリスマ黒野にビジネスマンとして尊敬する越野専務を筆頭とした現場叩き上げの第一営業部メンバー。



社内の対立構図は明確に出来ていた。

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