第三話(07) 勉強になりました!
* * *
「キューくんっ! やった、やったわ!」
目堂さんは僕の両手を掴んで、ぴょんぴょん跳ね続けている。
「め、目堂さん、はしゃぎ過ぎ……」
こうやって手を握られるのは恥ずかしいし……あんまり跳ねてると、目堂さんのスカートがめくれ上がりそうで……どきどきする。
がちゃ、とドアの開く音がした。目堂さんが大人しくなる。振り返れば、府川さんが戻ってきていた――……。
……府川さん、何か、変に見える。
「ああすまない子供達。お開きにしようか……用事が入ってしまってなぁ」
府川さんは申し訳なさそうな顔で、小首を傾げた。目堂さんが一瞬、悲しそうな顔をする。それでも。
「チャールズ府川さん! あのっ、魔法使いだけじゃなくて……他にもあたし達みたいな末裔や生き残りって、見たことありますかっ?」
「どういう意味だね?」
「怪物の末裔とか、そのものとか!」
尋ねられ府川さんは、しばらく、よくわからないと言った様子で宙を見上げて、
「――ああ、他の手品師に会いたいのかい?」
「……手品師って」
何かおかしい。僕も首を傾げたが、府川さんはにこにこしながら続けた。
「ところで二人は、マジシャンになりたいのかね? ずいぶん興味があったようだから……もしよければ、いい手品教室を紹介しようか?」
「手品教室……?」
目堂さんも異変に気付いたようで、僕を見る。でも、僕もわからない。何が起こっている?
府川さんは本物の魔法使いだった。なのに、どうして「手品教室」の話を?
「しかし君達は、もう十分に技術を持っているように思えるがね! 特に君だ、その蛇……本物のようで素晴らしい! 人を驚かし喜ばせるには、とてもいい手品だ!」
――僕達は、もしかして。
「そして君は、いい目をしている。カラコンかな? 神秘的に見せるのは、雰囲気作りにとてもいい……が、目だけではもったいないぞ、子供だから難しいかもしれないが、今度、衣装を考えてみるといい……それで二人で、まずは学校でショーをやってみたらどうかね? きっとウケるぞ!」
――大きな勘違いを、していたのかもしれない……!
「あの~、チャールズふか……」
そこまで言いかけた目堂さんの腕を、僕は引っ張った。
幸い、まだ、ばれていない。向こうは手品やファッションだと思っている。
がらにもなく、僕は大声を上げてしまった。
「学校でショーをやることは考えてませんでした! 先生に相談してみます! 今日はありがとうございました! 府川さんみたいなすごいマジシャンのショーを見れただけじゃなくて、こうしてお話もできて、すごく勉強になりました! 僕達も一流の手品師を目指して頑張ります!」
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