第三話(03) 三人だからデートじゃないし
* * *
『案外実際真面目な話……本物が混じってたりするかもしれないし?』
……というわけで、僕は目堂さんと一緒にショッピングモールに行くことになってしまった。
目堂さんとは、変わらず怪異の調査を続けていた。けれども、怪物も妖怪も現れないし、天使や悪魔や神様にも会えなかった。都市伝説も、結局、都市伝説。誰かの嘘。
まあマジックショーは確かに面白そうだから、行ってみてもいいか、と思ったが、はたと僕は気付く。
――これ、学校でチラシ張り出されてるんだよね?
賀茂さんが言っていたじゃないか。
……僕の街は、決して都会ではない。かといって、田舎でもない。じゃあ何かと言えば、少し寂れた感じの街、というべきだと思う。再開発が進んで、大型商業施設が数年前にできた具合で、普通の中学生の遊び場は、大体ここになる。
マジックショーなんて珍しいものがあると知ったら、暇な中学生はみんな行くと思う。
もしそこに、学校のアイドルと一緒に、僕のような奴が現れたら?
目立つに決まっている。いままでの怪異調査は、街の人の少ない場所だったから問題なかったけど。でも今回はこの街の栄えている場所だ。
これはよくない。目が多い。
デートだと勘違いされる!
僕と目堂さん、何か関係があるのだと、思われたくない。二人で行くのはまずすぎる!
――考えた末に、僕はスマホを手に取った。
「目堂さーん! ごめん、待った?」
「ううん……って」
――そしてマジックショー当日。ショーが始まる少し前。
ショッピングモールの入り口で、僕と目堂さんは待ち合わせした。目堂さんは変わらずゴスロリ風で「それっぽい服装」だった。僕を見れば手を振るが――僕が連れて来た人物を見て、首を傾げる。
日傘をさす僕の後ろには――井伊がいた。にこっ! と笑って目堂さんに手を振り返す。
「目堂っちおはよ~っ!」
「井伊くん? どうして……」
「マジックショー、目堂っちも観るんだろ~!」
これが僕の作戦だった。
そう、僕と目堂さんで行くから、まずいのだ。
でもここに井伊がいたら? 単純にグループで来た、そう見えるだろう。
確かに僕と井伊はいいとして、ここに目堂さんがいるのは、変かもしれないが……少なくとも、これでデートみたいには見られないだろう。そう信じたい。
「うわ~目堂っち、ちょーかわいいじゃん……!」
井伊が僕に囁く……井伊にはまず「マジックショーに二人で行かない?」と連絡して、その後に「隣の席の目堂さんも一緒に行きたいって」と送って、そういうことにしておいた。
目堂さんは僕に手招きする。小声で、
「キューくん、あたし達、魔法使いの正体が本物か確かめに来たのよ? 井伊くんがいると……動きにくくない?」
「でも……」
そう言われるから、いままで井伊のことを一言も話さなかった。そして僕は、いまも理由を説明できなかった――デートになりそうじゃん、と喉まででかかったところで、顔が熱を持って言えなくなってしまった。
「……キューくん大丈夫? 日光に当たった? トマトジュースある?」
「あっ、あっ……何でもない、大丈夫」
目堂さんはそれから、少し困ったように溜息を吐いたものの、やがて笑ってくれた。
「ま……いっか。もたもたしてるとはじまっちゃうし、みんなで見た方が楽しいだろうし!」
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