第188話 キラキラネームは昔からある

 前回「名字」について触れましたが、今回は下の「名前」について。


 近年では、珍しい読み方をするような奇抜な名前を「キラキラネーム」と呼んだりします。

 

 700年以上も昔、兼好法師が『徒然草』の中で、「最近の親の名付け方」について触れているそうです。


「人の名前においても、見慣れない珍しい漢字を付けるのがはやっているが、まったくつまらないことだ。どんなことも、珍しさを求め、一般的ではないものを好むのは、薄っぺらな教養しかない人が必ずやることだ」


 いやはや、現代にも通じる箴言。鎌倉時代に、既に苦言を呈していたとは……。


 新しい時代になると、変わった名前をつける人が増え、その数が増えてスタンダードとなり、名前に関する価値観や認知度も次第にアップデートされていく……こうして、どの時代にもある「キラキラネーム」というのは変遷を辿っていくのでしょう。


 おじいちゃんやおばあちゃんの名前のパターンが、今の世の中から考えると「古い名前だな」と感じてしまうかもしれません。


 でも、いつか自分がおじいちゃん・おばあちゃんと呼ばれる年齢になった頃、その時の流行からすると「古いタイプの名前ですね」と思われるかもしれない、ということです。


 NHKのドキュメンタリーで、キラキラネームで苦労した人が成人になって自ら改名手続きを行い、名前を変えた事例を取り上げていました。

 その人が「名前がキラキラネームというのは、悪い言い方になるけど、親が馬鹿だと自己紹介しているようなものなんですよ」と語っていたのが印象に残っています。


 少なくとも、漢字の持つ意味などを調べたり、周りの知人に意見を聞いたりしてから、慎重に名前を決めて役所に届けてほしい、と思います。

 自分の知識で「良い字の並びだ」と思っていた組み合わせが、知らなかっただけで、実は別の意味があって、悪い意味だったり、エッチな意味が含まれていることもあります。あるいは、単純に誤字だったり。

 親の無知からヘンな名前を付けられた子供は、名乗るたびに笑われたり、赤面したり、人生で苦労することに……。


 私が小学校の頃、学校の宿題で「親に、自分の名前の由来を聞いてきてください」というのがありました。

 そこで、「あなたには、大きくなったら○○みたいに立派になってほしいから、○○という名前にしたのよ」と、ルーツを知るのは、感動的だったのを記憶しています。

「たまたま読んでたマンガの主人公の名前から拝借しただけで、特に深い意味はないんだわー、あははは」とか、聞かされたら、子供としてはショックかも知れません……。


 犬や猫などのペットであれば、どんなに突飛なネーミングであろうと、自分で書類に名前を書くことも、自己紹介で自分の名前を発音することも無いわけですが、人間となると話は別です。


 自分では選べない「看板」を、一生背負っていくことになる。


「名前は、親が子供にあげる、最初のプレゼント」なんて綺麗なキャッチコピーもありますが、プレゼントにはもらって嬉しいものもあれば、そうでないものもあります。


 もちろん、名付けられた本人が納得して、気に入っているなら、他人がとやかく言うことではないんですけどね。


 最近の学校の先生たち、生徒の名簿の読み方で苦労していることを鑑みると、大変だなあ、と思ってしまいます。

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