第185話 「冷たい」は「爪痛い」から

 冬の朝のベッドほど、離れがたいものはありません。


 少し体を出してみるけれど、肩の辺りが寒くて、頭まで布団をかぶって、二度寝したくなる……誰しも経験あるのでは。 


 寒いと血行が悪くなるので、健康面でも心配になってきますが、最近の住宅事情は床暖房やらオイルヒーターやら、高性能な暖房機器が建物に組み込まれていて、昔のような「隙間風が吹きすさぶ木造建築」は姿を消しつつあります。


 学校の教室だって、冷暖房完備なのが当たり前。


 寒さに震えながら上着を着込んで厚着をして授業を受ける、なんて光景は……今はもう、ないのでしょうけど。

 私が小さい頃は、教室の前の方に石油ストーブがあって、その上でクラスメイトと一緒にミカンを焼いて食べたりして、「教室が焦げ臭くなるでしょ!」と先生に怒られたりしたものですが。

 ストーブは教室の前の方にあるので、風邪を引きやすい子が席替えで後ろの方の席になると、先生の一存で「一番前に来なさい。ストーブに近い方が、暖かくていいでしょ」と余計な世話を焼いてくれたり。


 学校の水道水も冷たくて、「凍結防止」のプレートが掛かった一部の水道は、凍って破裂しないように、ちょろちょろと水を出し続ける措置を取っていました。


 さて、意外な「冷たい」の語源。


「冷たい」はもともと、寒さから指先がかじかんで、痛く感じること。


 あまりにも冷えて、指先の「爪」が痛くなり、「爪痛い」が「冷たい」に変化したと言われています。


「痛いくらい、寒い」ことの形容詞として最初は使われていましたが、やがて温度の低さを表現する単語になりました。


 紫式部の『源氏物語』では、冷酷な人の眼差しに対して「まぶしつべたまし」と表現している文章が登場するそうです。


「まぶし」は「眼差し」、「つべたまし」が「冷たい」の意味。

 

 この「つべたまし」という言葉が、「爪痛し」から「冷たし」の中間、途中の変化の経過だという説があります。

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