第119話 ラッコはグルメな大食漢
水面にぷかぷかと仰向けで浮かび、お腹の上に乗せた貝を、石で叩いて砕き、中身を食べる、癒し系の動物、ラッコ。
お気に入りの石を、自分の体にある毛皮のポケットに隠し持ったりする、可愛らしいところもあります。
海の上で過ごす彼らは、眠る時は潮で流されないように、海底から伸びたワカメなどを体に巻き付けて、位置を固定して眠ります。
海面がベッド、海藻がフトン。磯臭い夢を見そうです。
ああやって海に浮いていられるのは、体毛に空気を蓄えて、浮袋代わりにしているからです。
ラッコ1匹あたりの体毛は 「約8億本」と言われています。
人間の頭髪が約10万本くらいなので、ヒトのアタマに生えている髪の毛の8000倍くらいがラッコの体にあるわけです。
どれだけの密度か。それにしても毛深い生き物だな。罪深い生き物よりは、いいですけどね。慈悲深い私はそう思います。
もちろん、浮袋としてだけではなく、冷たい海水から空気のガードで身を守る防寒の役割もあります。天然の毛皮。
ちなみに、ラッコは漢字で書くと「海獺」あるいは「猟虎」です。字面が怖い。
さて、2023年現在、日本国内の水族館に、ラッコは何匹いると思いますか?
1990年代には100匹以上いましたが、今はなんと、全部で 「3匹」しかいないそうです。
世界的にみると、毛皮目的の乱獲で個体数が減少していたところに、1980年代末にアメリカのアラスカ沖で発生したタンカー事故で油が流出し、野生のラッコが激減したそうです。
2000年には国際自然保護連合(IUCM) がラッコを絶滅危惧種に指定したため、海外から日本に輸入することもできません。
ラッコは人工的に繁殖させるのが元々難しいうえに、水族館で飼育するうえでネックとなるのは、そのエサ代。
ラッコは、栄養価の高い貝や甲殻類しか食べません。
アワビ、ウニ、エビ、カニなど……高級寿司屋ばりのゼータクな食生活のうえ、 個体差によって「ボクはカニが好きだけどエビはキライ」 など、食の好みも激しく、 出したエサを食べないこともあるとか。
しかも大食漢で、自分の体重の15%を一日に食べるといいます。
20kgのラッコであれば3kg。
人間でいうなら、80kgの男性が一日で12kg食べるようなものです。とんでもない大食い。
高級食材しか食べない、しかも偏食家で大食漢のラッコ。
そんなわけで、ラッコ1匹を飼育するだけで、水族館のエサ代は1日5万、一か月で150万、年間で1800万というおそるべき概算!
人間で、1人の食費が1日5万円だったら、どんだけエンゲル係数が高いのよ、って金銭感覚ですが……可愛いしなあ、ラッコ。
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