第110話 いっぽん、にほん、さんぼん……数え方の不思議

 外国人の知人が「日本語の数え方の難しさ」を嘆いていました。


 お箸などの、細長い棒状の物を数える時、日本語では「一本・二本・三本……」と数えます。


 口に出して発音する時の読み方は、


「いっぽん、にほん、さんぼん、よんほん、ごほん、ろっぽん、ななほん、はっぽん、きゅうほん、じゅっぽん……」


 となります。


 生まれた時から日本語に馴染んでいると、当たり前のように使っている数え方です。

 算数の「九九」のように、学校の授業で一生懸命暗記をして頭に叩き込んだ記憶もありません。

 自然と使いこなせるようになっていました。


 よく考えてみると、単位は「本」なのに、「ほん」「ぼん」「ぽん」と、清音・濁音・半濁音で変わるのはなぜでしょうか?


 しかも、並び方が不規則です。法則性がありません。


「いっぽん(半濁音)」「にほん(清音)」「さんぼん(濁音)」「よんほん(清音)」「ごほん(清音)」「ろっぽん(半濁音)」「ななほん(清音)」「はっぽん(半濁音)」「きゅうほん(清音)」「じゅっぽん(半濁音)」……。


 この「半濁音や濁音がついたり、つかなかったりする」ルールが、日本語を勉強する外国の方には、難解に感じるそうで。


「本」だけではなく、「杯」「発」「分」「泊」「歩」「匹」なども、同様のルールです。


 数え方に、濁音や半濁音が混じる理由は、「言葉と言葉の口の形のつながりで、発音のしやすさ、言いやすさ」から来ている、ということらしいです。

 これを「音便おんびん」と呼ぶようです。


「いちほん、にほん、だと言いづらいな……いっほん、にほん、まだ言いづらい……いっぽん、にほん……おっ、これなら続けて言う時に言いやすい!」


 こんな風に、続けて言いやすいように調整するうちに、多くの人が真似るようになり、それが広まって、一種の「規則」として固まっていった、そんな感じでしょうか。


 ちなみに、アナウンサー業界の言葉遣いでは「十本」は「じゅっぽん」ではなく「じっぽん」だそうです。「十時十分」も「じゅうじ・じっぷん」。

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