第109話 「巻き戻し」の「巻き」って何?
昭和生まれの世代の方。
ビデオのリモコンボタンで「早送り」の逆は?という質問に、当たり前のように「巻き戻し」と答えると思います。
ビデオ「テープ」ですから、「巻いて戻す」のは当たり前でしょ、レンタルビデオ屋さんの店頭にも「ビデオテープは最初まで巻き戻してから返却して下さい」って注意書きのポスターが貼ってあったし!
……と思っている方、昨今のリモコンボタンは、とっくに「巻き戻し」という表記はなく、「早戻し」となっているのです!
軽くショックを受けてますか? 実は私もショックを受けました。
いや、そもそも、「ビデオ」って言葉が古いでしょ、今は普通にハードディスクでしょ、という若い世代からのツッコミすらも危惧されますが、このまま進行します。
ビデオテープのような、物理的に「テープを巻き戻す」という行為そのものが、昨今の業界の表現では「事実に即していない」という判断で、家電メーカーさんもリモコンの表記を「早戻し」へ変更しているのです。
(カセットテープを動かす「ラジカセ」では、「巻き戻し」表記は現役活躍中です)
DVDやブルーレイ、あるいは「HDD内の動画データのみ」では、「巻き戻し」って言われても「何を巻くの?」ってなっちゃいますもんね。
物質としてのソフトを店頭で貸りて、見終えたら店に返して……という流れも、いつかは「懐かしい笑い話」となってしまう日が来ているのかもしれません。
映画もドラマも、ネットを通じたサブスクの配信サービスがあれば、「レンタルショップ」は不要ですもんね。自宅で気軽に、ふと思った時に見られるし。
ウチの近所でも、昔ながらの「レンタルショップ」は次々と閉店し、姿を消しました。
時代の趨勢とはいえ、一抹の寂しさも感じます。
学生時代、「ビデオでーた」という雑誌で、新しい映画が○月○日に入荷されるのを調べて、早朝から自転車を漕いでレンタルしに行ったこともあったっけなあ……と、懐かしい想い出の一ページ。
B級映画の、色褪せたVHSビデオのジャケットとかって「味」があって、個人的には好きだったりしますけどね。
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