第86話 「辛い」という味は無い
「暑い夏には、あえて辛いものを食べて、汗をかくのがいいんだよ!」と力説して、いかにも辛そうな「真っ赤な料理」をヒーヒー言いながら食べる先輩がいました。
ですが、夏だろうが冬だろうが、辛いものが嫌いな私にとっては「あえて辛いものを食べる」という選択肢がありません。
「マイ七味」を持ち歩いて、何にでもかけて食べる同僚もいました。そんなに真っ赤にしたら、元の味が分からなくなっちゃうよ、と心配になったものです。
そもそも、人間の舌が感じる味覚のうち、「辛味」というのは無いのです。
人間の舌の表面にある
トウガラシやワサビ、マスタードなどを食べて「辛っ!」と感じるのは、「甘い」「しょっぱい」と感じるのと同じ種類の味覚ではなく、刺激を受けた舌が「痛い」という信号を送っているのです。その反応を「辛さ」と呼んでいるだけなのです。「辛味」ではなく「痛み」というわけです。
「辛い(からい)」と「辛い(つらい)」は同じ字、とは良く言ったものです。
カプサイシンなど、発汗を促して、ストレス解消や血行促進、脂肪燃焼などに効果あり、という側面も確かにあるのですが、刺激物は胃腸にダメージを与えるだけではなく、激辛料理などは、味覚を感じる味蕾の細胞を殺しているのです。
小さい頃に読んだ雑学の本で「子供のうちに辛いものを食べ過ぎると、舌の細胞が死んで、大人になってから味オンチになる」という情報を得てから、私は辛いものを避けるようになりました。
年配の方が漬物などの「しょっぱくて濃い味」を求めるのも、加齢により少なくなった味覚細胞では、ハッキリとした味の方が認識しやすいから、という裏付けも載っており「確かにおじいちゃんもおばあちゃんも、漬物って好きだもんなあ……」と妙に納得したものです。
そっか、個人的に「辛い」のが嫌いなのは、「舌の痛み」というよりは「味オンチになる恐怖心」から来ていたのかな……。
※ 個人差はあると思うので、「辛い物が大好き」な人たちを批判・非難する意図はありません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます