第84話 「摂氏何度」の「摂氏」って、誰のこと?

 夏も暑い日が続いております。皆様、元気でお過ごしでしょうか。


 かき氷。冷やし中華。冷たいプール。アイスクリーム。納期間近。締め切り。デッドリミット。


 文字の上でも少し涼しくなれば、と努力してみましたが、後半は一部の職種限定で別の意味で冷えるかもしれません。


 さて、温度の「35℃」などの表記を「摂氏35度」と読みます。


 この「摂氏せっし」というのは人名から来ています。


 スウェーデンの天文学者、アンデルス・セルシウスが1742年に考案した計測基準が基になっており、「℃」の文字は、Anders Celsius、「セルシウス」の「C」なのです。


「セルシウス」の発音は、中国語における音訳で「摂爾修」という文字を宛てられました。

 その文字が日本でも取り入れられたので、「摂氏」というのは「セルシウス氏」の略、ということです。


 ちなみに、日本ではあまり目にしませんが、「摂氏」とは別に「華氏かし」という計測基準もあります。


 これも人名が由来で、ドイツの物理学者、ガブリエル・ファーレンハイトが提唱したもので、Gabriel Fahrenheitの「ファーレンハイト」の「F」の頭文字で表記されます。


「ファーレンハイト」の発音が中国語における音訳で「華倫海」という文字を宛てられ、これが日本に渡って「華氏」となった、というわけです。


 縦長で、赤い液体が伸びて目盛りを示すタイプの温度計では、左右にそれぞれ読み替え用に「℃」「゜F」の異なる表記がついている場合もあります。


 1953年にSF作家のレイ・ブラッドベリが発表した『華氏491度』という小説がありました。


 禁書がテーマの作品で、タイトルは「紙という素材が自然発火する温度」から来ています。

 華氏温度で491゜Fだと、摂氏温度で233℃くらい。


 摂氏温度と華氏温度では基準が異なるので、数値が全然違ってくるのです。


「摂氏温度」の方は、水が凍って固体になる温度(凝固点)を「0℃」、水が沸騰する温度(沸点)を「100℃」と設定して、その間を均等に100分割した目盛りが基準となっています。


「華氏温度」の方は、凝固点を「32゜F」、沸点を「212゜F」と設定し、その間を均等に180分割しています。


 換算するとちょっと面倒くさいのですが、水の凝固点から、沸点の間には摂氏で100、華氏で180の差があるので、摂氏の1℃は、おおよそ華氏の1.8゜Fに相当することがわかります。


 アメリカなど英語圏への海外旅行に行く際は、あちらは主に「華氏温度」の表示なので、ホテルの室内のエアコン設定など、お間違えないように。


 華氏温度の77゜Fが、だいたい摂氏温度の25℃くらい。「7が揃ってフィーバー(F)で、ニッコリ」と覚えましょう。(パチンコか)

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