第79話 ラグビー校から始まったラグビー

 前回、「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」の作者、ルイス・キャロルを取り上げました。


 ルイス・キャロルが10代の頃にいた学校が、イギリスの寄宿学校・ラグビー校。


「ザ・ナイン」と呼ばれる、イギリスの9大トップ校のうちのひとつです。

 卒業生がオックスフォード大学やケンブリッジ大学などに進学する、超難関の進学校として知られています。


 そんな学校の中でも、ルイス・キャロルは教師から「あんなに優秀な生徒は見たことがない」と、数学の才能を見出されてベタ褒めされています。頭の良い生徒だったのでしょうね。


「ハリー・ポッター」のように、生徒たちは、特色豊かな複数ある寮のどれかに入ることが必須で、この「ハウスシステム」はラグビー校が発祥と言われています。 


 1823年、ラグビー校でフットボールの試合をしている最中、プレイヤーのひとり、ウィリアム・ウェッブ・エリスがルール違反を犯しました。


「アンフェアな傾向に走る癖があった」「元はクリケット選手で、フットボールにおいては不正しがちだった」と仲間に言われていた彼ですが、足で蹴るべきボールを、なんと、手で抱えたまま相手のゴールを目指して走り出したのです。


 これを発端に、「手でボールを抱えて、相手のゴールを目指して走る」スポーツが生まれました。


その新しいスポーツには、ラグビー校の名前がつけられました。これが、「ラグビー」の起源とされています。


 ラグビーワールドカップの優勝記念カップは、彼の名にちなんで「ウェッブ・エリス・カップ」と名づけられているそうです。

(この優勝カップは、「ラグビーで優勝経験のある人間以外、決して触ってはいけない」というルールがあるとか)


 ラグビー校のあるウォリックシャー州には「ザ・ウィリアム・ウェッブ・エリス」と、店名に彼の名を冠する酒場まであるとか。


 ルール違反したらそれがウケて新ルールのスポーツが生まれ、最初のルール違反者の名前が「発明者」として現在も残り、学校名がそのままスポーツの名前となった……なんだか奇妙な歴史です。


 その発明者、ウィリアム・ウェッブ・エリスは、ラグビー校を卒業したあとはオックスフォード大学に入り、クリケット選手を経て、牧師になったそうです。ラグビー選手になったとか、そういうのはないんですね……。

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