第71話 キーボードの配置は、打ちにくくするため?

 今、この文章を読んでいる媒体は、PCでしょうか? スマホでしょうか?


 PCで見ている人は、キーボードを見て下さい。

 スマホで見ている人は……想像力で補ってください。あるいは「キーボード配列」で検索すると画像が出てくるので、頭に入れてから、エッセイの続きをどうぞ。


 キーボードのアルファベット配置をよく見ると、はっきり法則性や規則性がなく、デタラメです。

 ABC順でもないし、日本語の平仮名だって、50音順ではないですし。

 

 むかし、ブラインドタッチを学ぶ練習用タイピングソフトで、


「右手の人差し指をJキーに、左手の人差し指をFキーに置いて。これがホームポジションです」


 とか習った記憶があります。

(目印のために、大抵のキーボードのJキーとFキーにはへこみや突起など、指で触って分かるようにしてあります)

 その時、「なんでABC順に並んでないんだよ……全部場所を覚えろってのかー」とグチグチこぼした記憶も。


 この配列の由来には諸説あるのですが、最初にタイプライターが発明された時、「早く打鍵しすぎると故障の元になるので、わざと遅く打たせるためにデタラメにした」という説があります。


 発明したばかりのタイプライターは、ABC順にキーが並んでいました。


 タイプライターは、アルファベットのボタンをひとつ押すと、そのボタンに反応して文字型のアームがガシャコン、と心地良い金属の駆動音と共に動いて、紙に文字のハンコをペタリと押し、印字するという仕組みでした。

 そのため、慣れてきて早く打鍵しすぎると、アームが次々と動くうちに絡まり、すぐに壊れてしまったそうです。

 そこで、わざと打鍵速度を遅くさせるために「打ちにくい不規則な配置にした」……という説。


 私は近年まで、この説を信じていましたが、どうやらガセネタのようで。


 初期のタイプライターは実際にABCの並びだったようですが、その使用者であった電報のオペレーターが「モールス信号を打ちやすくするため」と案を提出し、何度も少しずつ改良され、現在のキー配列になった、というのが真相のようです。

 その名残が現代まで残っている、というわけです。


 これが現在、キーボード配置の主流となっている「QWERTYクワーティ配列」と呼ばれるものです。


 キーボードの数字列の一段下、アルファベットの並びの左上からQ・W・E・R・T・Yとなっているので、そこから名付けられたようです。


「主流」もあれば、別の流れもあるわけで、「QWERTY配列」の他にも「Dvorakドヴォラック配列」というのもあります。


 タイピングのしやすさ、長時間の打鍵による身体的負担の軽減、を考慮して後年生み出された配列で、慣れるとDvorak配列のキーボードの方が速く快適に打てるそうです(タイピングの大会の上位入賞者は、この「Dvorak」配列の利用者が多いとか)。

 日本語用に特化してカスタマイズした「Dvorak JP」まであるらしいです。


 この「Dvorak配列」、対応している訓練用ソフトや紹介書籍が少ないため、あまり普及していないのが現状のようですが……。


 ほかにも、Colemak配列、Malton配列、NICOLA配列というのもあるようです。興味のある方は調べてみて下さい。

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