第60話 綿ぼこりが灰色な理由

 掃除しようと、部屋で大きな家具を動かした際、陰に隠れている綿ぼこりが出てきますよね。

「綿ぼこり」の素材って、糸くずとかゴミとかが集まって出来た物なんだろうなあ、と想像はつきますが、必ずグレーであり、カラフルな綿ぼこりを見たことがありません。


 日常生活の中で、灰色一色のものなんて使っていないはずなのに、なんで必ず「綿ぼこりは灰色」になるのか……?

 衣服やじゅうたん、カーテン、ベッドシーツ……それらの糸くずから生まれたホコリなら、混ざり合ってカラフルになるんじゃないの?


 水彩絵の具のすべての色を混ぜ合わせると、最終的には「灰色」になります。


 いくつか複数の色が細かく並んでいる状態のものを、離れて見ると、それらが混ざった色に見えるという視覚現象を「並置混色へいちこんしょく」と言います。

 それが人間の目の中で起きているのです。

 黒と白の細かいドットの衣服を、遠くから見た時にグレーに見えるような、そんな感じ。


 綿ぼこりを回収し、電子顕微鏡で観察すると、カラフルな繊維クズが集まっているのが確認できます。

 いろんな色が混ざりすぎて、一色に見えてしまう、というわけです。


「じゃあ、もともと一色の空間で暮らしたら、綿ぼこりもその色になるのか?」という興味深い実験を、あるテレビ番組でやっていました。


 カーテン、じゅうたん、ベッドシーツ、衣服、帽子、下着や靴下に至るまで、「生活範囲の布地は、すべて赤一色」という狭い部屋で、テレビ局のスタッフに一か月間生活してもらったそうです。(視界は常時赤ばかり、精神的にヘンになりそう……)


 そうすると、ベッドの下に発生したのは……なんと「真っ赤な綿ぼこり」。


 他の色が混ざらず、あらゆる繊維クズが「赤色」のため、「並置混色」が起きないのです。

 というか、原材料が「赤」だけなので、混じりようがないですね。

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