第49話 映画が現実にもたらした影響

 1975年にスティーブン・スピルバーグが監督した、人間がサメに襲われる映画「JAWS(ジョーズ)」。


 大阪のユニバにもアトラクションでありますよね。


 でも、よく考えてみると、「サメ」は英語で「SHARK(シャーク)」なんです。「JAWS」って……?

 

 調べてみると、「JAW」は「アゴ」のこと。

 「S」がつく複数形の「JAWS」で、「歯を含めた上下のアゴ全体」を意味します。


 サメが人間を食べる、その巨大な歯、アゴ……のイメージでこのタイトルをつけたのでしょうけれど、それ以降、「サメ」=「ジョーズ」になってしまい、「ジョーズ」と名前がつくサメ映画がどれだけ作られたことか。

 図鑑などは、ちゃんと「シャーク」になってるんですけどね。


 もうひとつ。


 1981年のリドリー・スコット監督作品「エイリアン」について。


 黒くてヌメヌメした異形の宇宙人に、人間が襲われるSF映画です。


 原題である「ALIEN」は、英語の意味は本来「外国人」でした。

 

 詳しく言うと、「別の場所から来た、よそ者」の意味。


 以前、日本の国際線の空港には、入国審査の外国人ゲートに「Alien Passport」と英語表記されていました。

 ですが1981年の「エイリアン」の映画の影響もあり、「エイリアン」という言葉は「人間を襲う映画のモンスター」と同義になってしまい、嫌がったせいか、現在の英語表記では「Forign Passport」に変更されています。


 最近はもう収まったのかな……と思うのですが、2000年の映画「バトル・ロワイアル」も、現実への波及を感じた作品でした。


 2000年以前は、三つ巴など、複数の派閥が入り乱れて戦うような構図を「バトル・ロイヤル」と言っていました。「ロワイアル」ではなく。


 1999年の高見広春の小説を原作とする、中学生の少年少女がひとクラス分の生徒ごと無人島に拉致され、最後のひとりになるまで殺し合うという過激な内容の「バトル・ロワイアル」という映画がヒットして以降、バラエティ番組やプロレス団体の興行でも、「バトル・ロイヤル」という言葉は、一様に「バトル・ロワイアル」という発音に置き換えられるようになり、「影響力すげーな」と思ったものです。


 もっとも、このタイトルは、フランス語を知っている友人から小説の作者が教えてもらって、それを採用したものらしいですが、これは誤訳で、「バトル・ロイヤル」を正確にフランス語の発音に直すと「バタイユ・ロワイアル」が正しいそうです。


 最近見たバラエティ番組で「バトル・ロイヤル」という言葉を久しぶりに聞いて、「あ、世間ではもう、『バトル・ロワイアル』って言わなくなったんだなあ……」と感慨に耽ったもので。


 個人的にこの映画はすごく好きで、「バトル・ロワイアル」は2000年当時、映画館で4回観ています(後年に製作された3D版も含めると、6回)。

 思い出の映画なのです。   


 昔、「バト・ロワ」(略称)は、ネットで二次創作が山ほど作られたものでした……懐かしいなあ(遠い目)。


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