第34話 天からやってくる「ファフロツキーズ」

 新海誠監督のアニメーション映画「天気の子」(2019年)で、空から雨に混じって、透明なオタマジャクシのようなものが落ちてきて、SNSで「ファフロツキーズ」と話題になる演出があります。


 空から、雨や雪など、天候次第で降ってくる“以外”の、通常ではまず降らないような「ありえない物」が降ってくる現象を「ファフロツキーズ現象」と言います。


 江戸時代の書物にも「怪雨(あやしのあめ)」として、大量の獣の毛が混じった雨や、赤い雨、大量の魚が降ってきた、という記録があるそうです。


 アメリカで、1876年に大量の赤身肉の肉片が降ってきたという事件は、「ケンタッキー血の雨事件」として知られています。

 2001年のインドでは、赤い雨が降り「ケーララの赤い雨」と呼ばれました。

 日本では2006年、石川県各所で数十匹のオタマジャクシが降ってきた「オタマジャクシ騒動」として、ニュースに取り上げられていましたし、2018年の中国では、雨の強い日にタコやエビ、ヒトデなど海の生物が空から降ってきたと報じられています。


 1901年のアメリカ・ミネソタ州、1981年のギリシャなどでは、大量のカエルが降ってくるという現象があったそうです。


 1999年のアメリカ映画「マグノリア」のクライマックスで、なんの前触れもなく空から大量のカエルが降って来て地面を覆うほどに積もっていく……カエルが嫌いの人にとってトラウマになりそうなシーンは、事実に基づいていたんですね。

 

 さて、「ファフロツキーズ現象」、原因としては、肉片や魚などであれば、「肉食の鳥の群れが、飛んでいる最中に、中途半端に飲み込んだ肉を吐き出した」「竜巻で吸い上げられた魚の群れが内陸部で一斉に落ちてきた」など、科学的に説明がつけられそうです。


 他の落下現象については、説明がつきませんが、オカルトはオカルトで、「謎のまま」の方がロマンがある気もします……。


 ちなみに、「ファフロツキーズ」という発音をするのは、日本だけのようです。


 英語のスペルは「Fafrotskies」。

 超常現象研究科のアイヴァン・サンダーソンが「falls from the skies」(空からの落下物)を略して作った造語だそうです。

(この方、「オーパーツ」という言葉の生みの親でもあります)


 本来は「ファフロットスカイズ」という発音が近いらしいのですが、この言葉を日本に紹介する際に、翻訳者が発音を誤って、それが広まって定着したのだそうで。


 天からの落下物の話を語ってきましたが、日本で有名なスラングは「ラピュタ」の「親方! 空から女の子が!」でしょうかね。


 いきなり美少女が空から降って来て(天使や天女など)少年が救って、出会いが始まる……というアニメやコミックのパターンは、ひと昔のラブコメでよく見られた類例であり、「落ちもの」なんてジャンルで括られていたこともありましたっけ。


 俺も今、空を見てるんだけどなー。美少女が降ってくる気配、なさそうだなー。


 落下物の話をお送りしましたが、特に「オチ」はありません。すみません。

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