第3話 2泊目

 今時なので、面会NGであります。自分の事で精一杯のため、昨日は連絡を乞う家族に


「字うつつらい」


のみ送りました。朝になってまた目を開けていられる時間が増えヨロヨロと思わず愚痴のように柴チョコとして入院のツイートを。家族には


「点滴だから下着は半袖がいい。ペットボトルの水。あとメガネ」


人生でメガネなしで自宅以外にいる日があろうとは思いませんでした。重度の近視です。それだけ目を開けてなかったという事だと思います。なんとも甘えた荷物の催促をしていると朝ごはんです。


「おー牛乳」


さすが病院の朝食って感じで牛乳が出ました。飲めないんだなこれが。残していることに気づいた看護師さんに飲めなくてと告げると、ようやく私のアレルギー問題が表面化したみたいです。月曜日に管理栄養士が来るからそれまでは耐えて欲しいと言われました。決して不便はないのですが、看護師さんも出さないようにしてますが、このコロナ禍、なんだか、皆様いっぱいいっぱい人手不足感は否めなくて、もとより文句を言うつもりはなく、こうして入院できただけでも有り難く、


「下痢するくらいですし、慣れてますから、適当に食べますから気にしないで下さい。」


と伝えました。ま、


「おーキウイ!よく冷えて緑が美しく美味しそうだが、無理なんだー」「あー豆腐にエビかけちゃったかー」


と、昼、夜、独り言は漏らしてましたがね。


さてお医者様の回診によりまだまだ眼振があり、どうやら、右耳がやられたことがわかりました。家族が調べたらしく


「前庭神経炎ではないか?」


と連絡をよこしてましたがその通りでした。まだ点滴は続き、トイレは頼んで車椅子移動です。


 点滴はトイレが近いです。スマホの時計を睨みながら2時間経ったからもう呼んでも迷惑じゃないだろうか、今忙しいだろうか、あんまり無理すると膀胱炎になっちゃうなとかそんな事ばかり考えていました。そして、あれ?と思いました。来てくださる看護師さんが男性ばかり。おやおやこの階は随分と男性看護師さんの割合が高いものだ。と呑気に構えておりましたが、さすがに私の呼び出しに2人も男性看護師さんが現れてどっちがやる?と譲り合っていて気づきました。


 大柄なめまい患者の介助はもし倒れちゃったりしたら、力仕事だから男性看護師の方が良いのではと。もしかして車椅子を押すのもすごく重いとか。そして昨日の痴態を気にしない当たりからこの患者は誰でも大丈夫だぞ的な。そんな事になったのではと。ええ平気ですとも。メガネをかけてないし目も開けたり閉じたり、薄目だったり。全ての医療従事者が美男美女に見えます。制服着てキビキビ働いてますから格好いい事この上ないです。うん、イケメン看護師さん達ありがとうありがとう。はい。


 更に看護師達はめまい患者を甘やかし始めました。氷枕をあてがったのです。凄く気持ちいい。次第に無くてはいられなくなり、しょっちゅう取り替えてもらってました。


 明日が月曜日になります。学校、仕事が始まります。家族達が登校をどうするかの連絡が飛び交い始めました。インフルエンザは発症から五日、解熱後二日は休まなければ行けないと決まっております。誰かは登校する。どうやって登下校するか、です。そして柴チョコの家は僻地。学区の1番遠い所で最寄りの学校まで4キロ、駅は6.5キロの道のりです。バスね、バス。2時間に1本あるかしらね。


 柴チョコは運転手だったのであります。


 柴チョコはなんとかなるまでサボっちゃえ〜というタイプですが、私を入院させてくれた家人は真面目な方です。まず月曜日登校予定の小学生1人と火曜日登校予定のもう1人の小学生2人組は小学校に置き去りにされバスで帰る訓練をさせられました。未だインフルエンザに罹患してないペーパードライバーの子(つい二週間前に免許取ったばかり。脳内「落下」の亜理子ちゃんで再生して下さい)は急遽初心者マークを貼った7人乗り三列シートの乗用車をいきなり運転練習。隣に私ですら乗せたくない鬼となったかの家人をコーチとして……。 


「助けて」「こんな防御なしに濃硫酸を満たした容器に純水を入れるようなマネ」「あー死んでくるー」「鬼だー。道中ずっと怒りっぱなしだー」


などと、どんどん愚痴を送ってくる。口数多く無事戻ったようであります。


難を逃れた解熱したばかりの子は

「お風呂入ってもいいかなー?」


猫は異常事態を察して篭りきりとか。


 ただただ「ごめんよ」でありました。




 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る