第6話③ 茂美、47歳の恋(3)
今なら。
少年の頃の、貴方の気持ちが分かります。
別に今の夫に不満があるわけもなく。
只、フッと、あの頃を思い出すと切なさがこみ上げるのです。
初めての遠出のデート。
電車を乗り継いで。
クタクタになるまで遊んだのに。
帰りの電車以外は覚えていない。
人もまばらな車中で。
私は貴方に肩を抱かれ、身体を預けていた。
眉をひそめる大人もいたけど。
貴方は何度もキス、してくれた。
私も唇を預けて。
白い海を漂っていた。
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「ごめんなさい・・・」
別れの言葉と共に俯く私を、貴方は呆然と眺めていましたね。
黙ったままの貴方を残して。
私は去っていきました。
貴方はそれから。
受験のために上京して。
殆ど、会うことはありませんでした。
あの時。
強引にでも引きとめてくれたらと。
想像する私は。
卑怯な女でしょうか?
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私が今の夫と結婚した時。
結婚式には来てくれなかったけど。
記念の絵を送ってくれましたね。
今でも、その絵は飾っています。
ふふ・・・・。
何だか、今夜は。
センチメンタルで。
年老いた私を少女に戻してくれています。
貴方は今、幸せですか?
もう一度、少年と少女のまま、会ってみたいですね。
お休みなさい。
※※※※※※※※※※※※※※※
お終い。
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