第6話③ 茂美、47歳の恋(3)

今なら。

少年の頃の、貴方の気持ちが分かります。


別に今の夫に不満があるわけもなく。

只、フッと、あの頃を思い出すと切なさがこみ上げるのです。


初めての遠出のデート。


電車を乗り継いで。

クタクタになるまで遊んだのに。


帰りの電車以外は覚えていない。


人もまばらな車中で。

私は貴方に肩を抱かれ、身体を預けていた。


眉をひそめる大人もいたけど。

貴方は何度もキス、してくれた。


私も唇を預けて。

白い海を漂っていた。


※※※※※※※※※※※※※※※


「ごめんなさい・・・」

別れの言葉と共に俯く私を、貴方は呆然と眺めていましたね。


黙ったままの貴方を残して。

私は去っていきました。


貴方はそれから。

受験のために上京して。


殆ど、会うことはありませんでした。


あの時。

強引にでも引きとめてくれたらと。


想像する私は。

卑怯な女でしょうか?


※※※※※※※※※※※※※※※


私が今の夫と結婚した時。

結婚式には来てくれなかったけど。


記念の絵を送ってくれましたね。

今でも、その絵は飾っています。


ふふ・・・・。


何だか、今夜は。

センチメンタルで。


年老いた私を少女に戻してくれています。


貴方は今、幸せですか?

もう一度、少年と少女のまま、会ってみたいですね。


お休みなさい。



※※※※※※※※※※※※※※※


お終い。

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