36.橋の向こうとこの世界の物語

ちょっとコンロ動くか実験してみろよ、とシグナルさんが魔水晶を渡してきたのでその場で起動。問題なく動いた。明日忘れず商人ギルドで登録しろよ、と言われて頷き、魔水晶を返して異空間に収納した。



「さて。夕方までどうする?」

「まだ午前中だしな!なにかいい依頼はないかな!」

「半日でできる依頼よねぇ?薬草採取でも行く?薬師ギルドならいつでも買い取ってくれるわよ。」

「ねぇねぇ、俺この街来てからまだそんな日がたってないんだけど、貴族街に図書館あるんでしょ?図書館もそうだけどあの大きな橋の向こうって貴族しか通れないの?」

「ああ?貴族街ってそんなおおざっぱなーーー.....お前もしかして噴水広場にある案内図見て言ってる?」

「え?うん。」

「あっはは!あれね、相当昔の案内図よ!?案内図の機能果たしてないくらい昔の!」

「えぇー。そうなの?」

「まぁ大雑把なくくりじゃそうかもしれねぇけど、人口が多くなりすぎて平民でも結構橋の向こう側にも住んでるぞ。西門と東門は1回壊して拡張してっからな、この街橋の向こうは横長になってんだよな。領主館は動かせないしそれより奥は行けねえってんで。図書館も土地の関係で向こうだけど、平民でも入れる。入場に補償料だかで結構高い金払わなきゃなんねぇけど。」

「小銀貨1枚だよ。高いよね。」

「ハクもたまに行くからな!俺は本は眠くなるのもあって読まないから行かないが!ハクは勉強熱心で魔物にも詳しいぞ!」

「ブラウンみたいに寝たりしないけど私も行かないかなー。アクセサリーショップなら行くわ。服屋も素敵なのあるし。」

「俺は調べたいものある時だけだな。大抵はラオ爺のとこで事足りる。立ち読みしすぎて怒られっけど。」

「へぇ。ねね、案内してよ橋の向こう!」

「あーー....ま、い、か?」

「おう!案内してあげようではないか!」

「私女が好きそうなとこくらいしか知らないわよ?」

「ぼ、僕、古本屋知ってるよ!」

「それ有力情報!」



そんなこんなで。



「でっけー橋だなー。」



現在橋の上。橋のたもとにいた傭兵らしき人は、怪しい人がいた時くらいしか動かないらしい。お登りさんよろしく連れられて来てもらった俺はギルドカードチェックされた。門番もそうだけどエメラルド王国所属でヘリオドール支部の騎士らしい。

ヴィンさんって騎士だったんだ。そういえば胸当てとか同じのつけてる。



「馬車もすれ違えるくらいに広く作ったみたいだよ。」



橋の大きさに感心してたらハク君が横に並んで教えてくれる。

そういえば目線同じくらいだなー。



「ハク君って何歳?」

「え?えっと、17歳だよ。突然だね?」

「皆んなは?」

「おれらハク以外みんな22歳ー。アキは?」

「俺永遠の18歳。」

「なんだそれ。ステータスの歳は?」

「ステータスには18歳とありますなぁ。」

「じゃあ18じゃねぇか!変な言い方すんなよなぁ!」



いや固定だからさぁ。生きてる年数なら120歳とかじゃないかね。身体にひっぱられるのか精神年齢はちっとも成長してない気がするが。



「ハク君最年少だね!わーい!」

「うぅ.....1歳しか違わないのに.....。」



いや本当は100歳くらい違うよ。

エルフとかの種族にしてくれてもよかったのにね。出自の問題かなぁ。



「身長はそんなに変わらないね。俺もう止まっちゃったからハク君に抜かれるの待つだけかぁ。」

「......まだ伸びるかもよ?」

「伸びないよ。」



固定なんだもん。

こっちの人はみんな大っきいし、ブラウンさんは190超えてるし、ハク君も伸びそう。

1人取り残されたような、少し寂しい気持ちもあって、誤魔化すようにニコリと笑った。





ーーーーーーーーーー

ーーーー


勿論最初にハク君に案内してもらった古本屋に行き、ザッと背表紙眺めて面白そうなものをチラ見してバンバン買った。ラオさんとこと同じくらい金額使ったけど、古本屋なだけあって倍以上買えた。また来ようと誓った。皆んな引きつった顔やめたまえよ。


その後ブラウンさんオススメの肉ガッツリのステーキ屋に行き、サルビアさんがげんなりしたがなんだかんだそこそこ食べてたり、シグナルさんオススメの魔道具屋では小型冷蔵庫みたいなものがあったのでお買い上げ。「お前必要ないだろ」言われたけど、違うのだ。これは枕の誘惑亭のカウンター横に置いてもらうのだ。風呂上がりの牛乳とか設置して貰いたい。そりゃ異空間収納があるけども、風呂上がりの牛乳スタイル浸透すればいいと画策かくさくしちゃおっかなと。コーヒー牛乳もいいね。


そういえば魔道具はなんでもかんでも魔水晶使うんじゃなくて、ちょっとしたランプだとか掃除機みたいなものだと魔石で事足りるんだとか。魔水晶のがそりゃ長持ちするけど、平民だと魔水晶は値が張るし、空の魔石介して魔力流しながら使うっていう手もあるらしい。感覚的にはあれだね、電池の単1単3とか手回し蓄電のようなものかね。



「ここがお気に入りのアクセサリーショップよ!最近ダイヤモンド帝国で流行ったっていうアクセサリーもあるのよ!」



そんな事を思ってたらサルビアさん案内の元アクセサリー屋についた。

付与士が空の魔石に使い切りだけど結界魔法入れたりしてのアクセサリーもあるって話だから見てみよっかな、という事で来てみた。

こんなとこで空の魔石の使い道が。なんでも小銅貨1枚から魔石の大きさにより値段の違いもあるが回収してるらしい。

大きいものだったり色が綺麗だったりだと加工品としても価値があがるから魔力空でもそれなりの回収額になるらしい。



着いたアクセサリー屋はTHE・宝石商って感じで1人なら入りづらかっただろう。客層もやはり女性が多い......あ、でもチラホラ冒険者もいる。



「アキ君アキ君、これこれ、この辺りが帝国で最近流行ってるっていうアクセサリーよ。値段も手頃なの。」



そういってサルビアさんが指したアクセサリーは、1箇所小さな宝石が入った平べったいリングが3個一緒に革紐で通したようなネックレスや、同じ形状だけど形が歪んだハートの銀のネックレス、ゴツいのと細めのペアで幅広い指輪に文字が入っているだけのとか、鍵の形のネックレスだとか、地球で若者向けに流行ってたようなデザインが多かった。これはもしや?



「ーーーねぇサルビアさん。これさ、誰がデザインしたの?帝国の人?」

「よくぞ聞いてくれました!これね!例の!サンストーン神殿の巫女様の神託によって召喚された聖女様のデザインなんだって!!」

「ーーー例の?」

「アキ君知らないの?半年くらい前に、サンストーン神殿の巫女様が太陽神アポロ様から神託があって、ラピスの土地の魔力が枯渇こかつしそうだから、ラピス中の地宝石ちほうせきに魔力を満たす人間を召喚せよという話で、各神殿の魔力が多い神官が集結して召喚儀式を行って、3ヶ月くらい前かな。召喚されたのが勇者様と聖女様だよ。ご兄妹で、太陽神の加護で物凄い魔力を持って召喚されたらしいよ。でも魔法や魔物がいない世界からいらっしゃったそうだから、各地で訓練されながらゆっくり地宝石のある神殿を周るって話だよ。」

「そうそう、なんでも地宝石を満たし終わったら帰還の魔法陣がサンストーン神殿に現れるんだってさ。でもラピスが気に入ったらここで永住してもいいって選択があるそうで、永住して欲しい各国では大歓迎ムードなんだってよ。あの手この手でご機嫌とってるって話だぜ。」

「俺でさえその話は知ってるぞ!アキ、流石ヤマト大国ってだけあって世情に疎いな!ここ数年の災害が多いのも魔力枯渇の影響だって話だがヤマト大国に変化はなかったのか?」

「俺割とひきこもりだったから知らん。」

「えー、ひきこもりってタイプに見えないけどなぁ。」

「本に埋もれてたかったんだよ。」

「あぁ、本ね!」



今日の本の買いっぷりで誤魔化されてくれたみたいだ。

成る程、これがここの物語の主軸だな。

兄妹で召喚された若い日本人転移者って事ね。現在はそのダイヤモンド帝国に滞在中って事か?何処か知らんが。地図ってなかなか売ってないんだよなー。今度商人ギルドで聞いてみようかな。

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